銀魂

□貴方と、未来の夢をみる
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目が覚めると妙が九兵衛の顔を覗き込んでいた。
九兵衛が目を開けたのに気が付くと、妙はぽろぽろ涙をこぼし、よかったとつぶやいた。

「九ちゃん、大丈夫アルか?
私の酢昆布、食べるアルか?」
神楽も枕元にいた。

「神楽ちゃん、銀さんと新ちゃんに九ちゃんが目を覚ましたっていってきてくれる?
何か飲み物を持ってきてあげてほしいの。」
「わかったアル。」
神楽はそう言って部屋を出て行く。

「ここは?」
そう聞いた九兵衛に妙が震える声で
「私の家よ。
九ちゃん、貧血起こして倒れたのよ。
銀さんがここに気を失った九ちゃんを連れてきてくれたのを見た時は心臓が止まったわ。」
と答えた。

「そうだったのか、ありがとう。」

「今日はどうして一人でいたの?
どこに行ってたの?」
そう聞いた妙に九兵衛は
「病院に行った帰りだったんだ。
今日は柳生門下一同の剣術大会があって、みなそっちに出席している。」
と話す。

「そう、赤ちゃんはどうだったの?」
「順調だよ。
元気に育ってるそうだ。
もう動くんだよ。」
九兵衛は膨らみ始めた下腹部に手を当てた。

「大丈夫?
ひどい目にあってたりしない?」
妙が心配そうにきく。

「大丈夫だ。
北大路は優しいよ。
ひどいことなんて何もしない。
ひどいことをしてるのは僕のほうだ。
北大路は優しいのに、僕は土方くんを忘れることはできない。」
「九ちゃんはひどくないわ!
ひどいのはあのケチャラーの方よ!!
幸せだった九ちゃんを無理やり…!」
妙の顔が怒りに歪む。

「妙ちゃん、もうすんだことだよ。
僕は妙ちゃんにそんな顔してほしくない。」
九兵衛の言葉に妙は九兵衛を抱きしめた。
「ごめんね、九ちゃん。
でも私はあのケチャラーを許せないの。」

妙にだけは、北大路と何があったのか話をした。
話を聞いてもらってだいぶ気が楽になった、それだけで十分だ。

「もういいんだよ、妙ちゃん。」
九兵衛が微笑んだ時、
「入っていいか?」
と銀時の声がした。
「ああ、大丈夫だ。」
九兵衛がそう返事をすると銀時が入ってきた。
その後ろには飲み物を持った新八もいる。

「銀時、さっきはありがとう。
助かったよ。」
「いや、よかったよ、ただの貧血で。
あのメガネはゆるせねぇけど、ガキに罪は無いからな。」

銀時の言葉に九兵衛は俯いた。

「余計なこといってんじゃねぇ〜よ!!
この大馬鹿金欠天パ野郎が!」
妙が銀時を蹴り飛ばし、銀時が廊下に面した障子を巻き込みながら庭に吹っ飛んでいく。

その様子をみて、相変わらずだなと笑った九兵衛の目に、走ってきた黒い服の男が映りこんだ。

九兵衛の顔が強張った。
その男…土方十四郎は必死で走ってきたのか隊服のスカーフと髪は乱れ、息も上がっていた。

「なんで…」
「なんで銀さんが九ちゃんをここに連れてきたと思う?
九ちゃんが倒れたところからは万事屋の方が近いのに。
ここには近藤さんが潜んでることが多いから、近藤さんから土方さんに九ちゃんがいるってことが伝わると思ったのよ。」
呆然としている九兵衛に妙が微笑んだ。

「体は大丈夫か?」
土方はそういいながら家主である妙と新八に許可も得ずに部屋の中にあがりこんできた。
それを見て、妙たちは黙って部屋を出て行った。

だけど九兵衛は土方の顔を見ることができずにいた。
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