銀魂

□貴方と、未来の夢をみる
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妊娠して北大路と結婚して以来、九兵衛の体のことを心配する輿矩が嫌がるので、出かけるといったら検診で病院にいくくらいだ。
それだって、必ず誰かが付き添い、一人の時間など無かった。

でも今日は、柳生家の門下生一同の剣術大会があり、付き添いできるものがいない。
輿矩は心配して検診の日にちをずらすように言ったが、一人の時間が欲しかった九兵衛は一人で大丈夫といって病院にいった。

北大路と結婚した後、九兵衛は柳生家の敷地内に新たに建てられた九兵衛と北大路のための新居に移った。

土方の事は今も忘れることはできない。
それでも北大路は優しかった。

あの時は泣いても、わめいても、怒鳴っても、懇願しても、九兵衛をおさえつける手の力が緩むことは無かったのに、結婚してからの生活の中で、北大路はひたすらにやさしかった。
何よりも九兵衛を一番に大切にしてくれていた。

そんな北大路に九兵衛は混乱していた。
あの時の北大路と、今のやさしい北大路が本当に同じ人なのかと思ってしまうのだ。

だから妙にでも話をきいてもらいたい、そう思って病院の帰り道、家ではなく、妙の家に向かって歩いていると急なめまいに襲われた。

倒れる……そう思った瞬間、誰かのがっしりとした腕が九兵衛を支えた。

「大丈夫か?」
「銀時…」
聞こえてきた声が知り合いのものだったので安心する。

「何してるんだ、こんなところで?」
銀時の声が遠くなっていく。

支えてくれる人がいる安堵感からか九兵衛は気を失っていた。

銀時はため息を吐くと、妊娠しているというのにやつれたようにしか見えない九兵衛の小さな体をまるで壊れ物を扱うように抱き上げて、ゆっくりと歩き出した。
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