銀魂
□俺のものにならないならば…
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「分かりました、あまり気は進みませんが、若の後をつけていけばいいんですね。」
北大路は東城にそう言った。
「そうです、すみませんね、北大路。
私は今日は輿矩様とともに上様のもとにいかなければなりません。
若を見守ってあげることは出来ないのです。」
東城は本当に辛そうに言う。
(見守るって…あんたのしてることはストーカーだよ。
だから若があんたを嫌うんじゃないか。
こんな役目押し付けやがって。
俺まで若に嫌われたらどうしてくれるんだ。)
と北大路は心の中でだけ呟く。
そんなこと思ったっていえるわけがない。
東城は、柳生四天王の筆頭。
それだけ強い。
自分ではまだまだ東城には適わない。
それゆえに、いつだって九兵衛の一番そばにいるのは、東城になるのだ。
四天王の中で一番強いのは東城だから。
でも、いつか必ず東城を超えてみせる、北大路はそう自身に誓っていた。
柳生四天王と言われてはいるが、自分と東城は幼少の頃からずっと九兵衛のそばに居て、他の二人とは九兵衛と過ごした年月が違う。
だから南戸・西野よりさらに九兵衛に対する執着や、忠誠が大きくなるのは仕方ないことで。
東城ほど変態行為はしないが、九兵衛を心配する気持ちは北大路だって負けていない。
九兵衛がカワイクてしゃーないのは東城だけではないのだ。
ただ、東城のカワイクてと言うのは男女の愛情よりは、兄が妹を思うような愛情にちかく、北大路のカワイクてと言う感情は男性が女性を愛する感情だった。
幼い頃からずっと、九兵衛を見てきた。
小さい頃の九兵衛は本当に弱くて、いつもいつも泣いていた。
ただの門下生だった自分より弱かった。
東城は九兵衛が泣いてると自分も一緒に泣いてしまうが、北大路は九兵衛が強くならなくても自分が強くなればいい、九兵衛は本当は女の子だけど自分は男だからと思い、慰めるよりは自分の腕を上げることに夢中になっていた。
それなのに、もともとの才があったのか、慰め役だった東城は剣の腕もみるみる上がっていく。
才で東城に適わないことを悟った北大路は努力でそれを補っていくしかなかった。
だから本当は、九兵衛の後を東城のように付回すよりは稽古をしたかったが、心のどこかに若の姿を見たいと思う気持ちも少しあった。
それに、自分は東城よりうまく九兵衛をつけていく自信もあったし。
東城の部屋をでて、北大路は九兵衛の部屋の近くにいく。
最近の九兵衛は、妙の影響だろうか、男物の着物ではなく、地味ではあるが女物の着物で出かけることが多い。
北大路は九兵衛の左目をなくす原因になった妙を好きではないが、可愛い着物を着て歩きたかったと言う九兵衛の願いをかなえてくれてることに関しては感謝していた。
北大路は、強くなろうと必死でもがき、男の格好で生きてる九兵衛も、ずっと願っていた可愛い着物をきている九兵衛も、どっちも好きだった。
どっちも九兵衛だ。
男の格好をしていようが女の格好をしていようがどちらでもよかった。
九兵衛が自分のしたいようにすることが一番だと思っていたからだ。