銀魂

□一生分の恋をした
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その姿をみて土方はあごが落ちそうになる。

久しぶりに会うと言うのに、九兵衛の後ろには柳生四天王が控えていた。
しかも、九兵衛自身も四天王もあちこちに包帯や絆創膏を張っていた。

「すまない。
待たせたようだな、申し訳なかった。
東城、土方くんと会えたからもういいだろう。
早く屋敷に帰って四人とも療養しろ。」
そう言った九兵衛は鎖骨の真ん中に絆創膏、着物の袖からのぞく両手首には包帯が巻かれていた。
顔にも切り傷のような傷が何箇所もあり、自分と付き合うようになってからデートのときは女物の着物を着るようになった九兵衛は今日は男物の着物を着ていた。
顔に傷があるから女物の着物を着るのが恥ずかしかったのかもしれないと土方は思った。

でも、四天王もみな、怪我を負っている。
もしかして柳生家で何かあったのではないか、土方はすぐにそう思った。

「早く屋敷に帰って療養しろ。」
帰ろうとしない四天王に九兵衛はもう一度そういった。
「しかし若…」
言いかけた東城を九兵衛が制す。
「土方くんと僕が無事に会えたら帰るとお前たちは言っただろう。
だから僕はお前たちが付いてくるのを許可した。
でも本当は屋敷で寝ていてほしかったんだ。
それに、確かに両腕を負傷しているが、刀は握れる。
これからのことを考えたらお前たちに早く傷を治してもらうほうが大事なことだ。」

九兵衛の言葉に東城が土方をみた。
「土方殿、若は今、両手を負傷していていつものように剣を振るうことができません。
どうか、若をお守りください。
お願いします。」

マヨラーだの、ニコチン中毒だのなんだのと今まで自分に
「ガキかてめぇは」
と言いたくなるようなことばかり言って、大事な若に付いた虫を追い払おうとしていた東城がそんな事を言ったので、土方はびっくりしてくわえようとしていたタバコを落とした。

「若、もし若に何かありましたら、俺はすぐに若の後を追います。
われら四天王が仕えているのは柳生家ではない、若、あなたです。」
北大路が無表情でとんでもないことを言った。

それに追随するように、赤毛の男が九兵衛に宣言する。
「俺も追います。
付き合ってる女たちより若が大事ですから。」

「俺もです。
お子様ランチの旗より若が大事です。」
坊主頭のでかい男もそう言い切った。

「馬鹿!!そんな事するな!!」
怒っている九兵衛に東城が
「でしたら、そうならないようにお気をつけ下され。」
と苦々しい顔でいうと、もう一度、土方に深く頭を下げた。
他の三人も土方に頭を下げ、帰っていく。

その後姿を見送って、土方は九兵衛に向き合う。
「どうしたんだ、その傷は?!」
「ここではちょっと。
料亭の予約を取ってあるからそこで話す。」
そういうと、九兵衛はすたすたと歩き出した。
その後を追いながら土方は胸騒ぎがして仕方なかった。
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