黒子のバスケ

I swear the love
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「なんでマフィアになんかなる気になったんだ、お前は。」

ため息と共に吐き出した虹村の言葉にさつきは困ったように笑った。

「だって、赤司くんたちと離れるって選択肢がなかったんですよ。
家族みたいなものだから。」

「だからって、これからマフィアの幹部になります、そのために使えるものは使います、自分自身も武器になります、だけど初めてがそんなんじゃいやだから抱いてください…はねぇと思う。」

「じゃあ、なんで虹村さんは帝光に入ることに決めたんですか?」

目の前のさつきは不安げに虹村を見上げていた。

「赤司もすげぇこと考え付くよな。
みんなでマフィアになろうなんてよ。
そんな危なっかしい後輩達を放っておけるわけがねぇからな。
ストッパーが必要だろ?」 

笑ってるのに悲しげな虹村にさつきは言っていた。

「優しいですね、虹村さんは。」

「じゃなかったら、抱いて欲しいなんてお前の願いを聞いてやらねぇだろ。」 
虹村はさつきの髪を撫でると優しく抱き寄せた。

「最中は虹村さんって呼ぶなよ。
これからお前が虹村さんって呼ぶ時は、帝光の幹部として、帝光のボス・赤司征十郎の側近、虹村修造を呼ぶときだけだ。
学生時代、お前よくオレのこと修ちゃんって呼んでただろ?
今のオレは虹村さんじゃないからな。
それと、我慢するなよ。
痛いなら痛い、恥ずかしいなら恥ずかしい、気持ちいいなら気持ちいい、ちゃんと伝えてくれ。
できたらお前に痛い思いはさせたくないし、無理はさせたくない。
気持ちいい、そんな感情だけで満たされて欲しい。
オレに抱かれる時くらいは。」

「修ちゃん、ありがとう。」

震える声での感謝が合図だった。
虹村はさつきの唇に自分の唇をそっと重ねる。
触れるだけのキスを何度も何度も交わしてから深く口付けてさつきの舌に自分の舌を絡ませた。
たどたどしい動きで虹村の舌の動きに応えるさつきに虹村はさつきを愛しいと思う。

中学の時から可愛がっていた後輩たちが、マフィアになると聞いた時には、本当に驚いた。

赤司たちは容姿が派手で、それぞれが容姿以外にも勉強ができるとか、運動ができるとか、そんな感じの目立つ要素があったが、同じ施設で幼い頃から育ち、そこから通っているという環境で、無意識のうちに自分達以外の人間を寄せ付けようとしなかった。

だけど中学生のうちはもっといろんな人と付き合った方がいいんじゃねーの、と思った虹村は彼らを気にかけていた。
そのうち、彼らも虹村には心を開いてくれるようになった。

そうして彼らと関わっていくうちに、虹村はいつの間にか桃井さつきに恋愛感情を抱くようになっていた。
だから中学を卒業してもずっとさつきとコンタクトを取り続けた。

彼女達は相変わらず6人でいたけれど、まさか6人一緒にマフィアになるなんて、それはさすがに虹村の予想の遥か上をいっていた。
遥か上をいってたけど、放っておけない。
だから自分もそのマフィアとかやらになることに決めた。

そんな自分にさつきが頼んだ事が、『私を抱いて下さい』だった。
オレの長年の片思いなんか知らねぇで、そんな事を頼んでくるなんて。 
そうは思いつつも、断れないのは虹村がさつきに惚れてるからだ。
さつきの願いは全てかなえてやる、そう決めているからだ。 

だから今日だってオーシャンビューのホテルの部屋なんかとって、そこでさつきと一緒にいる。

舌を絡ませあいながら、虹村はさつきの来ているチュニックを捲り上げる。
キスをやめるとそれを脱がせた。

中学時代から彼女はスタイルがよかった。
男なら目を奪われるプロポーションと、整った顔立ちと、艶やかな長い髪と、いつでも明るく笑い、誰にでも同じ態度で気さくに明るく接するその性格とで、赤司たちがそばにいても彼女に密かに憧れる男は多かった。
それなのに、まさか赤司たちとマフィアになるために抱いてくれなんていわれるなんて。
あの頃は思ってもいなかった。

それでもあの頃芽生えた恋心は、今もずっと虹村の中にある。
だからこそ、こんな形で彼女を抱くのは本意ではないけれど。 

羞恥に目を閉じて顔を赤く染めた顔も色っぽい。
そしてやっぱり綺麗だと思う。
愛しい。
そんな感情しか自分の中にはない。
まだ恋も知らないこの女の子は、恋を知らないまま、虹村に身を任せている。
そこに何かしらの感情があっても、愛情はない。
それでも今、この瞬間はさつきは自分のことしか考えてないと思いたい。
抱いて欲しい、そう言ってくれたのは自分を必要としてくれてるからだと思いたい。

虹村の手の動きにさつきの息が上がっていく。
やっぱりこいつはこういう方面に才能がある。
自分自身が武器になる、さつきはそう言ってたけれど、自分で思う以上にこいつ自身は武器になるだろう。
男を夢中にさせるような、それで口を軽くさせて情報をぺらぺらしゃべらせるような、そんな女になる。
心と体をうまく切り離して、割り切って、男に極上の夢を見させるだろう。

だけど…
「お前の始めてはお前の好きな男じゃなかったけど、お前を始めて抱いた男はお前を何より愛してる事だけは事実だからな。」

虹村の呟きはさつきに聞こえてない。
聞こえないように言ったから。
お前はオレがお前を愛しているなんて思いもよらないだろ?
これから色々背負っていくだろうお前に、オレの想いまで背負わせるわけにいかねぇから伝えることはしねぇけど。

さつきを抱きながら、自分の人生の中でこんなに幸せな日はもう二度と来ないだろう、虹村はそんな事を考えていた。

チェックアウトの時間が近づいて、二人で一緒にシャワーを浴びた時に浴室でもさつきを抱いて、そうして二人は何事もなかったみたいに身支度を整えた。

「修ちゃん、どうもありがとう。」
別れ際、さつきが虹村の顔を見つめて言った。

虹村はさつきの額を小突くと笑った。

「私、今日のこと忘れないよ。
これから私、今までと違う私になるけど。だから修ちゃんだけは覚えててね。
今までの私のこと。」

「今までのお前もこれからのお前も、オレにとっては何も変わらねぇよ。
お前は桃井さつきだ。
今までもこれからもずっと。」
オレの愛する、たった一人の女だ。

さつきの唇に触れるだけのキスをして虹村はもう一度笑う。

「ありがとう、修ちゃん。」
さつきも笑う。

これから先、自分やさつきがどんな未来を歩むかは分からない。
だけどそれでも一つだけ、確かな事がある。
オレがお前を愛してる。
その気持ちだけは変わらない。
オレはお前に、生涯変わらぬ愛を誓う。

END

 

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