黒子のﾊﾞｽｹ
□今吉翔一・諦めの悪い男
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新鋭の暴君・桐皇はバスケの強豪高校だ。
洛山や秀徳のように伝統があるわけではないけれど、強い選手を集め、知名度を上げた。
そして、今年はキセキの世代のエースを獲得した。
練習はしないけど、試合には出る。
そんなとんでもない条件を飲み、青峰を獲得した桐皇は、我の強い連中の集まりであり、主将を務める今吉は飄々とはして見せていても、内心はストレスでいっぱいだった。
謝りきのこは気弱であやまってばかりでうざいのに、たまにいきなり負けず嫌いスイッチ入ってもんとかいうし。
男の割には可愛らしいといえるかも知れない桜井だけど、男のもんなんか聞いてもいらつくだけだ。
若松は声がでかい、うるさい、暑苦しい、声がでかい、うるさい、暑苦しい。
それに尽きる。
諏佐は常識人だけど、自分にかかる火の粉を全力でよける才能がある。
その火の粉は結局今吉にかかってくることが多い。
青峰は暴君だし、部室にグラビア置きっぱなしだし、暴君だし、自分が負けるわけないっていう自信だけはあるくせに、その強さに絶望してる、暴君なのに繊細な暴君だし。
マネージャーの桃井は可愛いけど、データ収集もすごいけど、どこかに青峰に負けてほしいと思ってるし。
青峰が負けるってことは、桐皇が負けるってことだけど、それ分かってんのやろか。
それでも、主将は自分だ。
こいつらを率いて一つでも多く勝つ。
それが自分の仕事だ。
今吉は今日も体育館へ向かう。
その途中で、裏庭の方に歩いていくピンク髪を見かけ、足を止めた。
あれ、桃井やないか。
なんで、部活の始まろうとしてる時間に体育館ではなくて、裏庭の方へいくんやろ？
告白されるんやないの、そう思った今吉は、こっそりとさつきの後をついていくことにした。
さつきは桐皇に入ってから、二回ほど、性質の悪い男子の告白を受けている。
二回とも若松がたまたま通りかかって助けたけれど、それからバスケ部では本人には悟らせてはいないが、桃井さつきが男子に告白されそうになった時はこっそり見守るような体制ができてしまった。
何かあったときはすぐに助けられるように。
だから今吉は、迷うことはなかった。
裏庭の隅に立っているのはさつきの隣のクラスの男子だ。
今朝、この彼から放課後、裏庭に来てほしいと言われていたからここに来た。