黒子のバスケ

今宵の月は美しい
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IH決勝リーグの初日。
秀徳との試合を控えた誠凛と、泉真館との試合を控えた桐皇は選手控え室に向うために歩いている廊下で会った。

「テツくん、お互いに頑張ろうね!」
黒子を見つけたさつきはいつもみたいに黒子に走り寄って抱きつき、そう告げた。
「そうですね、お互いに頑張りましょう。」
黒子はさつきに淡く微笑む。
その笑みにさつきが頬をうっすらと染めた時だった。

「決勝リーグなのにお決勝してないんですね。」

伊月がさつきを見て言った。
さつきはきょとんとした顔をする。

さつきと黒子を呆れたように見ていた青峰も、桃井はなんでいつも誠凛の11番にだきつくんだなんて思っていた若松も、さつきが黒子に抱き付いたことで死ねばいいとギリギリしてる桐皇の選手にすみませんと謝っていた桜井も、桐皇の他の選手もみんな唖然とした顔をしている。

リコと日向は穴があったら入りたいってこういう時に使う言葉だなと実感した。

これから決勝リーグが始まるという時に、自分たちだけがいるところで言うのならまだしも、桐皇の選手達の前でこんなくだらない駄洒落…。
桐皇のイケメン監督も、呆然として伊月を見ている。

その時、くすくすと可愛らしい笑い声が上がり、その場にいた全員がその声の主を見た。
誠凛・桐皇関係なく、全員がだ。

全員の視線の先で、肩を揺らし、口に手をあて、かわいく笑うのは桐皇学園のバスケ部マネージャー・桃井さつきだった。

「やだ、伊月さんって面白い!
決勝リーグなのにお決勝してないって…やだ、もうおかしい!」

さつきは本当におかしそうに笑っていて、リコは思わず
「ちょっと、この子大丈夫なの?
伊月くんの駄洒落で笑えるなんて…」
と本気で心配してしまった。

「決勝リーグなのにお決勝って何がおかしいのかわかんねーんだけど?」
「すみません、ボクにも分かりません。」
若松や桜井も首をかしげている。

そんな中、さつきは笑い続け、伊月は自分の駄洒落に大うけしてくれてるさつきに本当に嬉しそうにしている。

「いつまでもバカ笑いしてんじゃねーよ、ブス!
これから試合があるっつーのに緊張感がねぇんだよ!」
青峰に怒鳴られ、笑っていたさつきは頬を膨らませた。
「ブスとか言わなくてもいいでしょ!」

「大丈夫、桃井さんはとっても可愛いから。」
自分の駄洒落にウケてくれたさつきが、青峰にブスと言われてるのを聞いて、伊月は思わずさつきを庇っていた。

「伊月さん…可愛いなんて言われたの初めてだから嬉しいです…!」
伊月は駄洒落さえなければバスケ部一、女の子にもてる。
そんな伊月に可愛いと言われ、さつきは頬を染めている。

(いやいや、あんたがブスなら世の中には可愛い子なんてめったにいねーから!!
青峰パネェー!!)
全員が心の中でそう思ったが、口には出さない。

「てめえ本当にいい加減にしろよ!
試合前から萎えるんだよ!」
青峰は心底不機嫌そうに顔を顰め、さつきの腕を掴むと歩き始める。

「痛い、痛いよ腕!」
さつきは青峰に文句をいいつつも歩き始めた。

「ほらほら、控え室に行きますよ。」
監督の原澤に言われ、桐皇の選手達も控え室へと歩き始める。

それを見て誠凛のメンバーも動き始めた。
「伊月くん、ああいうの他の学校の選手の前じゃやめてよね!
恥ずかしいでしょ!」
「本当だ、ダァホ!」
リコと日向が伊月を思いっきり睨む。

「黒子、桃井さんっていい子だなぁ…。」
しかしリコと日向を無視して、伊月は黒子に話しかけていた。

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