黒子のバスケ

悪童と天使
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WC予選の試合が終わった後、会場で見学に来ていた海常の黄瀬涼太は秀徳の緑間真太郎と誠凛の黒子テツヤとあった。
黒子の横には火神が、緑間の横には高尾がいる。

「神奈川のお前が何でここにいるのだよ?」
開口一番、緑間が口を開く。

「ああ、見学に来たんっスよ。」

「海常はWC決まりましたもんね。」
黒子に言われ、黄瀬は頷いた。

「だから二人とも頑張るっスよ?
赤司っちの洛山と青峰っちの桐皇はWCに出場が決まってるっス。
そして紫っちの陽泉も決まったそうっス。
これで秀徳と誠凛が出場を決めれば、WCはキセキの世代の全面戦争ってことになるっスね。」
「そんなことは分かっているのだよ。」
「そうですね。
だから僕たちもWC決めますよ。」

緑間と黒子が頷いた時、緑間の横にいた高尾が
「真ちゃん、あれ、桐皇の…っつかキセキのマネージャーの桃井ちゃんじゃね?」
と緑間の肩をつつく。

その声に全員がそっちを向く。
確かにそこには桃井さつきがいた。

だけどさつきの視線は別の方を向いていて、黒子たちには気が付いていない。
190近い身長の男が3人もいる目立つ集団に気が付かないってどういうことだよ、高尾がそう思った時、さつきが笑って手を振った。

他の人間は気がつかなかったと思うが、高尾には見えていた。
さつきの視線の先にいる人間が。

「花宮さぁーん!
会えて嬉しい!」
霧崎第一の選手兼監督で無冠の五将の一人でもある、悪童・花宮真がそこにはいた。
さつきの声が聞こえて黒子も緑間も黄瀬も嫌そうな顔になる。

反対に高尾と火神は驚いていた。
「ちょ、あれ、どういうこと?!
桃井ちゃん、何で花宮とあんな親しげなの?!」
「おい、お前の元カノどうなってんだ?」

さつきは自分に黒子たちの視線が集まってることも知らず、花宮に走り寄っていく。

花宮は嫌そうな顔をしつつも、
「なんだよ。
お前、ま〜た一人でウロウロしてんのかよ?!」
とさつきに聞いている。

「だって、青峰くんが一人で行けって…。」
さつきは頬を膨らませている。

そんなさつきを見て花宮はため息をついた。
「今吉は?
誰か部員つけてくんなかったのかよ?!」
「誰か連れて行けって言われたんですけど、みんなきちんと練習してるのにそんなことで時間取られたら可哀想だから、断ったんです。」
さつきの言葉に花宮はさつきにでこピンをした。
「うっ…!」

それを見ていた火神は頭に来た。
女の子にでこピンをするなんて信じられない!
「オレ止めてくるわ!」

そう言って花宮の元に行こうとする火神を緑間が止めた。
「やめろ、桃井はあの花宮になついている。」

「「は?!
花宮になついてるってなんなの、それ?!」」
火神と高尾の声がハモった。

黒子と緑間と黄瀬は非常に不快そうな顔をしていた。
「何て言えばいいんでしょう?」
「全ては青峰っちのせいっスよ!」
「確かに、元凶は青峰なのだよ。」

「それじゃ意味がわかんねーよ!」
イラつき始めてる火神に気が付いた黒子がため息を吐く。

「僕ら帝光中は無敗を誇ってました。
実際に何が何でも勝つというのが帝光の理念ですし。
だから、わざと僕たちにケンカを吹っかけて、ノーゲームにしようとしたりする学校があったんです。
だけど赤司くんがきつく言っていたので、そういう挑発にのる人間はいなかった。」
「赤司っちは怖いっスからね。」
「それで業を煮やしたやつらが、試合前に桃井を攫おうとしたのだよ。
桃井に危害を加えられたくなかったら、負けろということがしたかったのだろう。
赤司はその可能性も考慮して桃井を一人にすることは絶対になかったのだが、ある日の練習試合、青峰のバカがバッシュの紐が切れてることに気が付かないでフロアにでてしまい、それに気が付いた桃井が慌てて一人で控え室に戻ってしまったのだよ。」
緑間は忌々しそうな顔をしているし、黄瀬も険しい顔をしているし、黒子も無表情の中にどこか怒りを滲ませている。

「キセキの世代なんてもてはやされているけど、大変だったんだな、真ちゃんたちも、桃井ちゃんも。」
高尾は三人のその表情だけで、キセキの世代などと呼ばれ、華やかな道を歩いてきたように見えるこの人たちにも色々あったのだなと思う。

「それは大変だけどよ、それと花宮とどう関係があんだよ?」
火神はそれと花宮がどう結びつくかが分からなかった。

「あんた、やっぱりバカだよな。
一人になった桃井ちゃんが攫われそうになったのを、気まぐれだかなんだかしんねーけど花宮が助けて、それから桃井ちゃんが花宮になついたってとこじゃねーの?」
高尾は火神に呆れる。
あの話の流れでどうしてそれが分からないのか分からない。

「そうなのか?!」

「簡単に説明するとそうですね。
青峰君はあとで、赤司君から大変恐ろしい目に合わされていました。」
「当たり前っス!
桃っちを危険な目に合わせた上に、あんな悪童になつくような事態を引き起こした張本人っスからね!」
「本当なのだよ。
しかし、それから桃井の前で花宮を悪く言うと桃井は怒ってしまうようになったのだよ。
青峰などは、一週間も口をきいてもらえなかったな。」

三人の言葉に二人はそっとさつきと花宮に視線を移す。

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