黒子のバスケ

□誰よりもお前だけを
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「赤司くぅん、前髪、伸びたよね?」
今日はコップ一杯しか飲んでないからうざくねぇ黄瀬と話をしていたら妙に甘い声に気が付いて、オレと黄瀬はそっちを見た。
さつきが赤司の膝の上に座って赤司の顔を覗き込んでいる。
赤司のとなりにいた緑間はアホ面さらしてさつきを凝視し、話をしてたテツと紫原も口を開けて二人を見てる。
赤司は顔を赤くして
「さつき、とりあえずそこから降りるんだ。」
とか言ってるが、声は震えていた。
「いや。
だってあったかいんだもん。
ね、前髪切ったほうがいいよ?
だって赤司くん、目がとてもきれいなのにもったいないよ?」
さつきは赤司の目をじっと見つめた。
赤司の顔がさらに赤くなる。
「オレはなんか今、見てはいけないものを見てる気がするっス。」
黄瀬の呟きは同感だ。
赤くなる赤司とか…レアだ。
……いや、そうじゃねぇだろ?!
「さつきぃ!!
おま、何してんだ?!」
オレは慌ててさつきと赤司に近寄っていく。
そしてさつきを赤司からひっぺがした。
「あ、大ちゃぁ〜ん。」
長い付き合いのオレでも始めて聞いた甘い声でさつきは笑う。
なんだ、なんだその顔!
この場にいる全員が呆けてさつきの顔を見つめている。
それほど、なんだか今のさつきの笑った顔はぐっと来るものがあった。
「おまっ、赤司の膝の上に座るとかすげぇな。」
怒るのもバカらしくなって、オレはそれしか言えない。
本当は彼氏のオレの前で他の男の膝の上に座るとかすんなといいたいとこだが、なんだかさつきの様子がいつもと違う気がした。
「大ちゃぁ〜ん」
さつきはオレの名前を呼びながらオレの首に腕を回して抱きついてくる。
「……桃井は酔ってるんじゃないか、青峰。」
ようやく我に返ったらしい緑間の言葉に全員がそうかと思う。
シャンパンだ、さつきはグラスに二杯ほどシャンパンを飲んだ。
一杯目は普通に、二杯目は赤司がいちごと一緒にカクテルみたいにしてやったのを飲んでた。
酔っ払ったのかよ、こいつ。
っつかこいつも絡み酒かよ!
しかも変な絡み方しやがって。
「そうみたいですね、おそらく酔っ払ってしまったんでしょう。」
テツも頷いている。
それでようやく、全員、自分を取り戻した。
「今日はもうおしまいするか?」
赤司がそう言った時、緑間が赤司がさつきに作ってやったカクテルもどきに使った残りのいちごを指先で摘む。
「それがいいかもしれないのだよ。
赤司、このいちご食べていいか?」
「ああ。」
「だめ。
それ、私の。」
赤司の返事とさつきの言葉がかぶってオレたちは驚く。
さつきはスッとオレから離れると緑間に近寄っていく。
驚いて誰も動けない中、さつきは緑間の手を取るとその手を自分の口元に持っていって緑間の指先のいちごを自分の口に入れた。
「〜〜〜っ!!」
こいつ!
緑間の指も一緒に口の中に入れやがった!
さつきは緑間の手を自分の口から引き抜いた。
さつきの唇と緑間の指先の間でさつきの唾液が糸を引いてなんかエロい。

赤司もテツも紫原も黄瀬も唖然としている。
緑間は完全にフリーズしていた。
「おいし♪
ミドリン、ごちそうさま♪」
さつきはふにゃんと微笑む。
「いや、こちらこそごちそうさまなのだよ…」
緑間は自分の指をぼんやりと見ながらそう返事をする。
「緑間ァァ!
ごちそうさまってなんだァァ?!」
思わず叫ぶオレを黄瀬が止める。
「緑間っちには悪気はないんスよ!」
「黄瀬君、鼻血だしながらいっても説得力ないです…。」
テツの言葉に振り返ったら黄瀬の鼻から血がたれていた。
「いやだってなんか桃っちエロ…」
「死ね!」
オレは黄瀬に肘鉄を食らわせるとさつきを回収に向う。
さつきは近づいてきたオレをみて再び笑うとオレに抱きついてきた。
「大ちゃぁん、いちごおいしいの。
私、いちご大好き。
でもさくらんぼはもっと好き。
でもね、一番はやっぱり大ちゃん!
大ちゃん、大ちゃん大好き!」
さつきはオレの首に腕を回し、抱きついてくる。
胸が当たってるっつーの!!
しかも普段、大好きとかぜってー言わねー(オレも言わねーけど)こいつが大好きを連発とか…やべぇ、なにこれ?
こいつってこんなに可愛かったっけ?
「ちょ、待て、離れろ、とりあえず離れろ!」
他のやつらもじっと見てるし、オレはさつきにそういうが、さつきは涙目で首を振る。
「いや、離れない!
大ちゃんは?
大ちゃんは私のこと好き?」
さつきがオレをじっと見つめる。
やばい、なんだこいつ、こんな色っぽかったっけ?
待て、おちつけ、オレ。
こいつはガキの頃、頭にかえるを乗せられて泣き喚いてた女だぞ…。
ああくそ、だけどその頃からずっと、オレはこいつを守ろうと思って…こいつを泣かしていいのはオレだけだって思ってて…こいつがテツを好きだった時も、そのうち飽きるだろうと思ってじっと我慢してたんだ、こいつを好きなのに。
「好きじゃねーワケなんかねーだろ?!」
「それじゃイヤ!」
自分たちに注目しているやつらがいるから恥ずかしく、だけど最大限の譲歩でそう言ったら即座に否定された。
オレにどうしろっていうんだよ、こいつらの前で好きだとか言わないとだめなのか?
さつきは潤んだ目でオレを見上げている。
「大ちゃんは私のこと好き?」
普段からは考えられないさつきの顔。
首を傾げる、媚びてるみてーなのに可愛い仕草。
あーもう、どうせ、オレはこいつに弱いんだ。
なんだかんだ言って最終的にはこいつに勝てねーんだ。
「好きにきまってんだろーが。
オレが何年お前を好きでいたと思ってんだよ、バカ。」
「嬉しい、私も大ちゃんが大好き!」
さつきがぎゅっと抱き付いてくる。
オレはさつきを抱きしめ返した。
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