黒子のバスケ
□紳士の開戦宣言
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『峰ちんのお守り』と紫原はさつきのことを言ってたが、確かにその通りだった。
みんなが帝光中の校門で待っているのに、青峰とさつきは来ていない。
しかしそれは、中学からのメンバーにしてみたら当たり前のことだったらしい。
「どうせまた、大輝が寝坊したんだろう。
あいつは変わらないな。
さつきの苦労が忍ばれるよ。」
赤司…キセキの世代のキャプテンがそう言っていたから。
「だから青峰と同じ桐皇になど行かなければよかったのだよ。
桃井がかわいそうだ。」
と緑間は不機嫌そうにしていて、黄瀬が
「ほんとっス。
桃っち、苦労してるんだろうな。」
と同意する。
「でも、桃井さんがいなかったら、青峰くんはどうなっていたんでしょうね?」
黒子の疑問に
「死んでんじゃない?」
紫原がまいう棒を頬張りながら答え、
「まぁ、桃井…さんがいなかったら、青峰なんかただのバスケバカだもんな。」
なんて火神が言うのをタイガもだよなんて内心氷室は思っていた。
そして、みんなにここまで大切に思われている桃井さつきはどんな女の子なんだろうと興味は尽きなかった。
その彼女が青峰を引っ張ってきた後、自分は一人になった彼女の隣をキープした。
こんな男ばかりの集団に女子一人を入れておきながら、彼女のことを一切気にせずに男だけで盛り上がっているキセキの世代+αに呆れたのもあるし、彼女と話したかったのもある。
話して分かったのは、彼女はとても聡明だということと、優しいということと、そして青峰を好きだということだ。
さつきは氷室と話していても、青峰を目で追っている。
「いつも彼を見てるね、好きなの?」
だから氷室はさつきにそう聞いた。
さつきは氷室の言葉に真っ赤になった後、こくりと小さく頷いた。
「色々あって、やっと元に戻った大ちゃんを、好きなんだって自覚し始めたところなんです。
大ちゃんにとっては、私はただの幼馴染でしかないんだけど…。」
さつきは恥ずかしそうでいて、どこか悲しそうにしながら氷室に告げた。
他の男を想うその顔に、氷室は皮肉だなと思う。
神様ってやっぱり残酷だと。
自分の方が先にバスケを始め、バスケを好きなのに神様は自分にタイガのような才能は与えてくれなかった。
そして他の男のことを想って美しい顔をしてるさつきを、自分は好きだ。
神様なんかいるわけがない。
それでも、この子が…桃井さつきが好きだ。
そう自覚した氷室はさつきに言った。
「オレでよければ、相談に乗るよ。」
そうすることでしか、さつきとの接点をもてないと思ったのだ。
それでメアドと携帯番号を交換し、さつきが青峰とうまくいって付き合うようになった今も、毎日メールのやりとりをしている。