黒子のバスケ

合同合宿
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キセキの世代が再び絆を取り戻した後、京都の赤司と秋田の紫原はともかく、誠凛の黒子と火神、秀徳の緑間、桐皇の青峰とさつき、海常の黄瀬はよく集まるようになっていた。

それを知ったリコが各校の監督に呼びかけ、それに各校の監督も応える形で四校一緒の合同合宿が実現した。
各校とも部員数が多いので合宿参加する生徒は絞られていたが、キセキの世代やそれに匹敵する実力を持つ選手のいる学校同士の合同合宿はお互いに対していい影響を与えた。

今は桐皇と海常が片面でゲームをし、となりでは誠凛と秀徳がもう片面でゲームをしている。

インターバルに入り、桐皇のベンチではさつきが選手に冷したタオルとドリンクを配っている。

スコアラーの部員からタオルとドリンクを受け取りながらそれを見ていた森山が、笠松に話しかけた。

「桐皇のマネ、やっぱ可愛いな。
オレ、今日はあの子のために戦ってる!」
「バカが!
海常のために戦え!!」
笠松は頭を抱えた。

残念なイケメンの惚れっぽさという悪い癖は抜けてないらしい。

でも仕方ないのかもしれない。
女子は誠凛の監督と桐皇のマネージャーしかいない。
女子マネがあんなにかいがいしく世話をしてくれたら、惚れっぽい森山がそう思うのは必然だ。

「っつーか森山先輩、桃っちは桐皇のマネなんで桐皇が勝った方が喜ぶと思うっス。」
「あ、そうか。」
「もうつっこむ気にもなんねぇよ…。」
笠松のため息はマリアナ海溝より深かった。

その時、タッパーを持ったさつきが海常のベンチに来た。
監督に頭を下げ、そのタッパーを渡す。

「桐皇からの差し入れです。
レモンのはちみつ漬け、よかったらどうぞ。」

「ありがとう!
さすが見た目が美しい人は心も美しいんだね。
敵にまで情けをくれるなんて。
あなたはまるで天使みたいな人だ。
いや、天女だ。
いや、女神だ。
いや、女神でさえあなたには勝てないだろう。
これは運命だと思う。
練習がおわったら君の部屋に行っていいだろうか?」

さつきの存在にいち早く気がついた森山はさつきに近寄り、考えられる限りの褒め言葉を口にした後で部屋に行ってもいいか?などと聞く。

一方の黄瀬はさっと青ざめる。
さつきの料理の腕は知っている。
これは差し入れじゃなく嫌がらせなんじゃないか…内心でそう思う黄瀬。
笠松にそうこっそり進言しようとするが、笠松はいきなり合同合宿してる他校のマネに変なことを言い始めた森山をさつきから引き離そうとするのに精一杯で黄瀬の声を無視している。

しかし普通の女子ならドン引きしそうな森山のせりふにさつきは
「そんなに褒められると嬉しいです。
青峰くんなんかしょっちゅう私のことブスって言うんです。
ありがとうございます、森山さん。
森山さんのそういう優しいとこ、素敵です。
でも部屋にくるのはちょっと…色々データが置いてあるので。
その代わり後でロビーでお話しませんか?」
と笑みを浮かべる。

そして黄瀬を見て頬を膨らませた。
「そんな顔しなくてもいいでしょ、きーちゃん。
このはちみつ漬け作ったの桜井くんだからおいしいよ、大丈夫だもん!」
さつきは黄瀬に向って舌をだすと海常の他のメンバーには丁寧に頭を下げて誠凛のベンチに走っていく。
黄瀬の考えていることはさつきには分かっていたらしい…。

「聞いたか?
ロビーでお話しませんか?だって。
よし、オレやっぱりあの子のために戦う!」

残念なイケメン森山にもう何も言う気がなくなったらしい笠松は、ため息をついてベンチに座りなおし、差し入れのレモンのはちみつ漬けを口にした。

黄瀬もそれを口にしながらそれにしても桃っちは本当に天然小悪魔だなぁと思う。
『ロビーでお話しませんか?』
なんて言われたら大体の男は勘違いするに違いない。

ただ断るだけでいいのに相手の心情を考えてしまい、譲歩案を出すのは昔からの彼女のくせだ。
彼女は優しすぎるのだ。

それからさつきはもてたけど、いつも強面のガングロ幼馴染が隣にいたからそれが強力な守護神になって、彼女に告白する男なんかいなかったのが現実だ。
そのせいか、彼女は男女の機微にはひどく鈍い。
無防備すぎるのだ。

あれじゃ桃っちの恋人は大変っスよね。
黄瀬は誠凛のリコにタッパーを渡してるさつきを見ながらそんなことを考えていた。

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