黒子のバスケ

宣戦布告
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「おいあれ!」
日向の言葉に誠凛メンバーは体育館の入り口を見た。
そこには決まり悪そうにしてる桐皇学園高校のエース青峰大輝がいた。

「桃井ちゃん迎えにきたんじゃん?」
小金井はさっきのさつきの様子を思い出す。
クマさんが…クマさんがっ…!
だけど小金井の回想はそこで止まった。

「もう一回外周行って来る?」
リコの笑顔に我に返った小金井が青峰に近づいていこうとすると、火神がそれを制した。
「あー、オレが行ってくるです。
話してーこともあるし…です。」

なので青峰のことは火神に任せることにした。

「おい、黒子の元カノのお前の幼馴染なら黒子が送って行った。」
火神は青峰のところまで行くと青峰が何か言うより先に言う。
青峰はその言葉を聞いて顔を歪めた。

「ここじゃなんだからあっち行こうぜ。」
火神が人気のない体育館と校舎を繋ぐ廊下の方を指出して歩き始めると、青峰は黙って火神についてきた。

黒子の元カノ…桃井さつきも試合中とはずいぶん印象が違って弱々しく見えたけど、今の青峰も普段の尊大さは微塵も感じられなかった。

火神の脳裏に青峰に嫌われたかもしれないと言って泣いていたさつきの顔が浮かぶ。

試合中の彼女は強かそうな女に見えた。
黒子も試合中でなければ可愛いと言っていた。
試合が始まってその意味が火神にも分かった。

日向の新しい攻撃パターンも読んでたし、桐皇の選手はもちろん、監督も彼女のデータを信用してそれを作戦に生かしているようだったし、帝光中の全中三連覇を影で支えたのは彼女だとさすがのバ火神にも分かる。

桐皇はプレイヤーの青峰大輝だけじゃなく、もっとやっかいな兵器を手に入れた、火神はそう思った。

なのにそのやっかいな兵器、試合を離れれば見た目は可愛い。
女らしいし、胸がでかいし。
あれで優秀でその上、青峰を心配して同じ学校に進学するとか…っつかあんな幼馴染いたらオレめちゃくちゃ大事にする。
火神はそう思うから、平然と彼女に暴言を吐ける青峰のことが信じられなかった。

「やっぱあいつ、テツのとこに来てたのか。
わりぃ、迷惑かけた。」

火神が足を止めて振り返ると青峰は軽く頭を下げた。
それを見て、火神の中で何かが切れたような気がした。

試合中の強かなさつきの顔と、子供みたいにピーピー泣いてテツくんとの好きと違う、どうしても放って置けないと青峰のことを言ってたさつきの顔が交互に浮かぶ。
泣いてる顔ですら、可愛かった。
どこがブスなのか、火神には分からなかった。

「なぁ、お前の幼馴染、どこがブスなんだよ?」
だから火神は青峰に聞いていた。

火神の問いかけに青峰は怪訝そうな顔をする。
「別に本気で言った訳じゃねーよ。
っつかさつきはブスじゃねーし。」

「でも、二度と顔見せんなって言ったんだろ?」
「それは…」

火神の射抜くような視線に青峰の方がたじろぐ。

「だったらいいじゃん、迎えになんかこなくてもよ。
二度と顔見たくねーんだろ?」
「だからそれは…」
言いかけた青峰を火神は睨む。

「お前さー、バスケ好きなんだろ?
んで実際お前バスケすげーし。
アメリカにもお前みてーなやつ、なかなかいねーよ。
だからそれだけバスケできるならそれでいーじゃん。
あの子はオレにくれよ。
お前にはバスケあんだから、泣かせることしかできねー幼馴染、オレによこせ。」

欲しい、彼女が欲しい。
放っておけないからとそばでずっと支えてくれる人が自分だって欲しい。
子供みたいに泣きながら今自分の目の前にいる男を放っておけないと言ってた、彼女の献身が自分も欲しい。

唖然としてる青峰に火神はもう一度言う。
「あの子、オレによこせよ。
オレなら泣かせねー。」

「オレだって泣かせようと思って泣かせたわけじゃねーよ!」

「泣かせたじゃねーか。
あの子泣いてたぜ。
お前のせいで。
だからオレがあの子もらうわ。」

こんなにアホ面さらした青峰なんか始めてみた。
だけどもうそんなの、どうでもいい。

彼女は泣いてた。
目の前のこの男に泣かされていた。

そして、オレはあの子には泣いて欲しくないと思った。
オレなら大事にするのにと思った。
だから、オレのそばにいて欲しいと思った。
それだけだ。
だけど、それが全てだ。

「キセキの世代のエースという称号も、桃井さつきってゆー幼馴染も、全部お前をぶっ倒してオレがもらっていく。
もう決めた。」

その言葉に呆けたような顔をしてる青峰を見返す火神の顔に、笑みが浮かんだ。

END


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