黒子のバスケ

□お前以外は欲しくない
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屋上の貯水タンクの上。
部活をサボることに決めた青峰はそこで寝転んでいた。
またさつきがうるさいかもしれないが、もうサボると決めた。

そう思っていた青峰は、体を起こした。
誰かが屋上に来たのに気が付いたからだ。
さつきが俺を探しにきたのか、そう思った青峰は下を覗き込む。

そこにたしかにさつきは居た。
いたけれど、さつき一人じゃないことに青峰は顔を顰めた。
見たこともない男がさつきと一緒にいる。


「桃井さん、こんなとこに無理やり連れてきてすみません。」
男はそう言ってさつきに頭を下げた。

「ううん、別に構わないけど。
それよりも、用事って何?」
人懐っこい性格のさつきは、にこにこと笑って男に聞く。


青峰はそれを不愉快な思いで見ていた。

さつきは分かってない、自分がもてることを。
容姿はいいし、誰にでも優しいし、もてないはずがない。
なのに人懐っこく、誰にでもにこやかに接するから、勘違いする男が後を立たないのだ。
今まで何度、人知れずそういう男を潰してきただろうか?

だけどそれでもそういう自分の隙をついて、さつきにちょっかいをだす男がいるのだ。

この男もぜぇってぇさつきに告白する気だ、そう思った青峰の期待を裏切らず、男は
「桃井さんと青峰は付き合ってるんですか?」
と聞く。

さつきは笑って首を横に振る。
「ちがうよ。
青峰くんは幼馴染。
みんなにそう聞かれるけど、違うから。」

笑って否定すんなよ!
青峰はそう思いながら顔を顰めた。

確かに自分たちは付き合ってないし、さつきがいつからか自分を大ちゃんじゃなく、青峰くんと呼ぶようになったのも分かってるけど、笑顔で否定されるのはむかつく。

「そっか、よかった。
それじゃ俺と付き合ってください。」

男はさつきをじっと見つめた。
ここにきてようやくさつきも男の意図に気が付いたのだろう。
驚いたような顔をする。
だけどすぐに首を横に振った。

「青峰くんは幼馴染だけど、他の男の子と付き合う気はないから。」

「え?!」
驚いたように聞き返す男にさつきは言う。

「青峰くんは幼馴染だけど、他の人と恋愛する気はないの。
青峰くんにそういう人ができるまでは、青峰くんの一番近くで彼を見てたいから。
青峰くんの全てを見てたいし、放っておけないから。」

言われた男も、さつきの言葉を聞いた青峰も目を見開いた。
さつきはさも当たり前の様に言ってる。

「青峰に彼女ができれば付き合ってくれるの?」
相手の男の問いかけにさつきは笑う。

「それはどうだろ…そうなって見なくちゃわからないけど。」

「早く青峰に彼女できねぇかな…」


青峰は考えるより先に貯水タンクの上から、二人の間に割り込むように飛び降りた。
「できるわけねーだろ、女になんか興味ねぇんだよ。」

さつきもさつきに告白してきた男も驚いている。

青峰は貯水タンクの上から飛び降りてきたのだけど、二人にはいきなり青峰が空から降ってきたようにしか見えなかったからだ。

しばらくぽかんとしてた二人だけど、我に返ったさつきが
「何やってるの!
どこから飛び降りてきたの?!」
と怒る。

「うるせーな。
お前、黙ってろ。」
青峰はさつきを抱き寄せてその顔を自分の胸板に押し付けると呆然としてる男を見た。

「俺はさつき以外の女になんか興味ねぇし、そばに居てほしい女もさつきだけだから、女なんかいらねぇよ。
さつき以外の女なんかいらねぇんだよ。
欲しいなんて思わねぇんだよ、さつき以外の女なんか。
ご愁傷様。」

青峰に睨まれて、男は慌てて屋上から走り去っていく。

その姿を見送ってから、青峰は暴れるさつきを離す。

「苦しいよ!
息がとまるかとおも…」

言いかけた唇は青峰の唇で塞がれていた。

「これからは俺との関係を誰かに聞かれたら付き合ってるって言っとけ。
さっきも言ったろ、俺はさつき以外の女なんかいらねぇんだよ。
だからもう青峰くんって呼ぶのもやめろよ。」

最初は驚いてたさつきだけど、やがてその顔が少しづつ綻び始める。

「うん、分かった!
それじゃ、部活行こ、大ちゃん!」

さつきは青峰の腕に自分の腕を絡めて青峰を見上げる。

さつきが笑ってるなら、部活くらい行ってやってもいいか。
青峰はさつきの頭を軽く小突くと絡みあった腕をそのままに歩き出した。

END

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