銀魂

□貴女と、未来の夢をみる
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眠っていた北大路が目を覚ましたのは、カンが働いたから、としかいいようがない。


九兵衛のつわりは妊娠中期には収まるのだと思っていたけれど結局は妊娠三十七週に入ってもおさまることはなく、それでも吐く回数は減ってきていて体重も適正内で増えているので、北大路は安心していた。

けれども、妊娠三十七週にはいったということはいつ子供が生まれてもおかしくはないということで、陣痛がくるのは朝方が多いというのも北大路は父親学級に通って知っていたから、それで目が覚めたのかもしれない。

目を覚ましてすぐ、隣を見た北大路は九兵衛がおなかを抱えて丸くなっているのをみてあわてて声をかけた。
「若!!
どうなさったのですか?!」

「北大路、腹がいたい…時計を早く…」
九兵衛は途切れ途切れにいう。

やはり陣痛か!!
北大路はあわてて自分の枕元にあった時計を九兵衛に渡す。

「すぐに病院と輿矩様にも連絡を…!」
あわてる北大路に九兵衛が
「病院への連絡は陣痛の感覚が10分になってからでいい。」
と痛みに顔をゆがめつつも答える。

「若…」

「それにしても結構痛いものだな、陣痛というのは。
僕は痛みには強いほうだと思っていたが、なかなか痛い…」

九兵衛は幼いころに左目を失っている。
その時の怪我は幼い子供には相当の痛みを伴ったに違いない。
それに肌には柳生家始まって以来の天才と謳われるために努力した証でもある傷跡が多数ある。
それでも左目を失ってから万事屋が真選組とー土方十四郎とー乗り込んで来るまで泣いたことがなかった。

その人がここまで言うのだから相当痛いに違いない。

「若、大丈夫ですか?」
北大路は九兵衛の腰の辺りをさすっていた。

「息を大きく吸ってください、その方が赤ん坊に酸素がいきわたって赤ん坊も楽になって下がってきやすいと父親学級で言ってました。」
九兵衛の腰をさすりながら自分が大きく息をして見せたら九兵衛はきょとんとした顔で北大路を見た後、くっくっくっ…と笑い始めた。

「なんですか、若…どうなさったんですか?」
痛そうだったはずなのに笑い始めた九兵衛に北大路は戸惑う。

「すまん、だがお前、すました顔してそんなことを実践して見せるからつい、おかしくなってな。
それにそんなすました顔で父親学級でそれを実践していたのかと思ったら…くっ…」

本当におかしそうにしている九兵衛に北大路は言っていた。

「あなたと腹の子のためなら俺は何だってします。
あなたが誰を愛していようと、俺が愛してるのはあなただけですから。」

笑っていた九兵衛は目を見開く。
北大路が自分を抱きしめたからだ。

「若、俺は本当にあなたを愛しています。
たとえ一時でもあなたをこの手に抱けるのなら、死んでもいいとまで思った。
そしてあんな男のものになってしまうのなら自分のものにしてしまいたいという欲望に勝てなかった。
だけど子供ができたことも、若が俺をかばって結婚してくれたことも俺には予想外でした。
それなのに若は
『腹の子を憎いと思ったことは一度もない。
北大路、お前を憎いと思ったことも一度も無い。
お前は幼い頃から僕のそばにいてくれた。
いつも、どんなときも、そばにいてくれた。
僕にとってはかけがえのない存在なんだ。
でなかったら、結婚などしない。
相手がただの門下生だったら、あの時、パパ上からかばったりはしなかった。
結婚などしなかった。』
と言ってくれました。
それだけで俺は十分に幸せなんです。
若があの副長を愛していても、それでも俺は幸せなんです。
だからあなたと腹の子を守るためなら何でもします。
いや、何でもできるんです。」

「お前…」
九兵衛は言いかけてはっとする。

「破水した…早く病院に連絡をしてくれ!」

九兵衛の言葉に北大路はあわてて枕元の携帯を手に取った。
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