銀魂
□チョコを君に
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九兵衛はスクールバックをいつもより大事そうに抱えながら学校への道を歩いていた。
クラスメートや先生からは
「なんで柳生がよりによって高杉と付き合ってるんだ?」
何ていわれるし、妙も高杉のことは快く思ってないらしいが、(当たり前だ、なんせいきなり公衆の面前でキスをしてきた男なのだから)九兵衛は高杉が好きだし、高杉も九兵衛を好きだといってくれる。
それがすごく嬉しい。
高杉は九兵衛と付き合うようになってから学校もちゃんと来るようになったし、近寄りがたい雰囲気だったのも随分と和らいだ。
そんな感じで九兵衛と高杉は上手くいっていた。
そんな中迎えた、今日、バレンタインデー。
付き合い始めてはじめてのバレンタイン、恋の始まりはとんでもないものだったけれど、始まりがどうあれ、上手くいっている恋人にチョコを渡したいと思うのは当然の事だ。
高杉は甘いものが余り好きではないというようなことを言っていたので、九兵衛は甘さを控えたクッキーにビターチョコをコーティングし、チョコペンでメッセージを書いたものを用意していた。
もちろん、手作りだ。
喜んでくれるかな、晋助。
九兵衛はクッキーの入ったスクールバッグを抱きしめて、軽やかな足取りで学校に向って歩いていた。
そんな九兵衛の足が止まったのは、前にいた三人組の女子の会話が聞こえてきたから。
「でも高杉って柳生と付き合ってんでしょ?
なのに高杉にチョコあげんの?」
その三人組の女子は隣のクラスの人で、いつも派手な格好をし、同じく派手で目立つ男子グループと仲良くしている。
九兵衛とは接点のない、もっといえば余りお近づきにはなりたくないタイプの人たちで、廊下で何かと話しかけられても作り笑顔でかわすなんてことを繰り返してきた、関わる事をさけてきた人たちだ。
その人たちが自分がいることに気が付いているのかいないのか、自分と高杉の話をしている。
「高杉に柳生なんかもったいないじゃん。
左目失明してて顔に傷も残ってるらしーし、全然可愛くないし、話しかけてやってもテキトーに流すし、ムカつくじゃん。
ちょっと優等生だからって調子のんなって感じ。
やっぱり柳生に高杉はもったいないよ。」
「かもねー。
で、高杉に告るわけ?」
「だって高杉ってかっこいいじゃん。
あれで手先も器用で学祭大活躍だったって聞いたし。」
「ま、確かに柳生よりはあんたの方が高杉に似合ってるかも。
奪っちゃいなよ、いけるって!」
心無いその言葉に九兵衛は頭を殴られたようなショックを受ける。
周りから自分達はこんな風に思われていたんだ…。
九兵衛は自分も気が付かないうちに方向転換をしていた。
そして学校とは逆の方に走り出していた。