銀魂

□キスを君に
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「九ちゃん、これあげるわ。
ポッキー。」

日直で朝、早めに登校した九兵衛は1人で日直の仕事をすませると、自分の机に座って本を読んでいた。
もう1人の日直は高杉晋助だが、彼はあまり学校に登校しない。
ヤンキーだとか周りは言っていて、妙もそう思っている。
だから、今日の日直も九兵衛一人でやったに違いない。

そんな親友を労うために妙は登校前にポッキーを買ったのだ。
ポッキーの日が近いらしく、コンビニに大々的に売り場ができていたので手に取った。
そしてそれを日直の仕事を終えて本を読んでいた九兵衛に渡した。

九兵衛は妙を見上げ、笑った。

「ありがと、妙ちゃん。
昼休みに一緒に食べようね。」

その顔は女の子の妙からみても可愛らしくて、妙は思わず九兵衛を抱きしめた。

九兵衛は幼少の頃、左目に怪我して顔に傷が残っている。
九兵衛は本来は綺麗な顔立ちをしているけれど、それがもとで一時は
『僕は男の子になる!』
と言ってそれらしく振る舞っていた。

そんな幼なじみを妙は心底心配していたけど、中学で数人の男子に告白されてから、彼女は少しだけ自分が女の子だと思えるようになったようで、笑う回数が増えた。
その笑顔は本当に綺麗で可愛らしく、そして日頃は口数も多い方ではない幼なじみの笑顔は、男子の心を掴むらしい。
今も、数人の男子が九兵衛を見て耳を赤くしているのを妙は確認した。

その時、教室に高杉が入ってきた。

めったに登校しない高杉が久々に登校してきたので、みんな驚いている。
しかし、高杉はまっすぐに九兵衛の隣の自分の席に歩いていくと腰を下ろし、突っ伏した。

その態度に気の強い妙はかちんとくる。
「ちょっと、あんた、今日日直なのに全部九ちゃんに押しつけるってどういうこと?!」
怒る妙をムシする高杉に妙は怒りをヒートアップさせるが、九兵衛が
「ここしばらく学校に来てない彼が、自分が日直なんて分かるわけがないよ、妙ちゃん。
高杉くん、君、今日は日直だから。
日誌は僕が書くから黒板消しとかはよろしく。」
九兵衛は穏やかな声で言っただけだった。

「あ?!
俺に日直やれっていうのか?!」
高杉は体を起こして九兵衛を睨む。
その目は妙も怯むくらい鋭かったが、九兵衛は動じなかった。

「久し振りに学校に来たんだから、案外日直なんかすると楽しいんじゃないか?
それからせっかく来たんだから、授業も受けた方がいい。
一時限目は現国だよ。
教科書ないなら貸そうか?」

九兵衛に微笑まれ、高杉は一瞬だけ呆気に取られた後、すぐに舌打ちをする。
完全にペースを乱された。
なんだ、この女。
顔はまぁ可愛い。
体つきは華奢だ。
なのに何で俺を怖がんねェ?

高杉は忌々しげに九兵衛を見たが、九兵衛は笑って机を近づけ、教科書を開いた。

「筆記具もないなら貸そうか?」
「うるせーな!」

とは言うものの、渡された筆記具を思わず受け取るほど、高杉は九兵衛のペースに飲まれていた。
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