銀魂

□あなたに会えなくなった今
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九兵衛が生まれた時、父親が占い師に一番いい名前をつけて欲しいとお願いしたら、付けてくれた名前が九兵衛だった。
父はうっかり占い師に性別を伝えるのを忘れたらしい。
それで九兵衛は女の子なのに九兵衛と名づけられた。

九兵衛が三才のころ、ベビーシッターの過失で九兵衛は左目に怪我を負った。
まぶたにはひどい怪我が残り、それを隠すために物心ついたころから九兵衛は眼帯を使うようになった。

すでに母は他界し、父と祖父しかいなかった九兵衛は、父と祖父から
「強くなれ」
と育てられた。

父と祖父は女の子なのに顔に傷がある以上、それが枷になる事もあるかもしれないと考えたのだ。
だから九兵衛を強い子に育てようと思った。
どんな困難にも負けないような、強い女の子に。

それは男になれと言った訳じゃなかったが、九兵衛は強くなれといわれるたび、女らしいものを身近においてはいけないと思うようになった。
ふわふわしたものは強さから遠いものだと九兵衛は思っていたからだ。

結果的に、九兵衛はあまり女の子らしいとは言いがたい性格になってしまった。
だけど、成長するにつれて九兵衛は、顔に眼帯をしていてもそれがマイナスにならないほど美しい子に育った。

柳生家は、代々続く名家だ。
父は外務省、祖父は定年したが警察庁の官僚を務めていた。

当然、美しい上に名家のお嬢様である九兵衛には縁談が舞い込み始めた。
だから父も祖父も、九兵衛に今度は女らしくあることを求め始めた。

今まで強くなれと育てられたのに、いきなり女らしくなれと私立のお嬢様学校に入学することになった九兵衛は、すべてが不満だった。
九兵衛の通ってる女子高は、身内以外の男性とも触れ合うことを禁止するような厳しさと、それなのに良妻賢母を目指して教育を行う、九兵衛にとっては面倒くさいことこの上ない学校だった。

だけど、規則は規則。
九兵衛は校則通り、身内以外の男性と触れ合わずに、学校まで車で送り迎えをしてもらう自由のまったくない高校生活を送っていた。
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