銀魂

□この世界であなただけ
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「柳生家の次期当主など連れてきて一体どうすると言うんです?!
また子さん、あなたも何故止めなかったんですか?!」

高杉が船に九兵衛を連れて帰り、幹部を招集して
「今日からここで暮らす九兵衛だ。」
と言ったのを聞いて武市は思わず叫んでいた。

「あたしに晋助様を止められるわけがないっス、武市変態!」

「変態じゃありません、フェミニストです。
確かに彼女は隻眼で男装美少女で萌える設定ではありますし、猪女しかいないこの船の華になるでしょうが、柳生家や幕府が彼女の失踪に黙っているとは思えませんよ!」

武市の言うことはもっともで、確かに柳生家の次期当主と高杉が付き合っていることは、鬼兵隊の幹部はもとより、下っ端まで知っていることだ。
敵対関係にある二人が、幸せそうに付き合ってる姿は微笑ましいけど、それがいつまでも続くものでもないことも分かっていた。

それが、いきなり今日からここで暮らすとか言われても、幕府や柳生家が彼女を探すことは必然に思えたし、その際には見廻組や真選組が動員されるはずだ。
それがまだ準備のできていない今の状態での、幕府との全面戦争の引き金になるかもしれない。

それに彼女は白夜叉・坂田銀時とも親しいとも聞く。
白夜叉までこの戦いに参戦したら、洒落にならないことになると思う。

「すまん、やはり迷惑だな…。」
九兵衛は幹部達の顔を見渡して呟いた。

高杉以外の男となんて結婚したくない、そう思って高杉についてきてしまったけど、よく考えたら鬼兵隊にとって自分の存在なんて迷惑以外の何者でもないはずだ。

ここは鬼兵隊の船。
自分は柳生家次期当主。
鬼兵隊が壊そうとしてる幕府を守護する立場の人間だ。

「いいではござらぬか、仲間ではなく、人質と思えば利用価値もあるでござろう。
それに第一、鬼兵隊のトップは晋助でござる。
晋助の決定に異を唱えるなど、あってはならないことでござる。」

小さくなってる九兵衛と憮然とした表情の高杉を横目に発言したのは河上万斉だった。
高杉に一番近い男でもある。
その男の言葉に幹部はそれ以上は何もいえなかった。

「決まりだな。
武市、あとで女物の着物を船に持ってこさせろ。
来島、それを俺の部屋にもってこい。」
高杉は煙を吐き出すと立ち上がった。

「いくぞ、九兵衛。」

それから、九兵衛は鬼兵隊の船で寝食を共にすることになった。
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