銀魂

□見廻組一日局長
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歯を磨きながら、朝のワイドショーを見ていた総悟は歯ブラシを落としてテレビ画面を食い入るように見つめた。
そこに映っていたのは、見廻組の白い隊服を着た九兵衛だったからだ。

見廻組は真選組と同じデザインで色の白い隊服を着ているが、局長と副長のみ、上着が長い。
九兵衛が着ているのも長い上着で、副長の今井信女はホットパンツにニーハイソックス、ロングブーツを履いてるが、九兵衛はミニスカートにロングブーツ姿でニーハイソックスははいていない。
今井信女より足の露出度が高い。
髪は以前、真選組一日局長をした時と違い、毛先を遊ばせたアップスタイルにしている。
眼帯は赤いハート形のものだった。

「明日、見廻組の一日局長に就任する柳生九兵衛さんの局長姿が一足先に公開されました。」
「以前は真選組の一日局長をなさったと思うんですが、やはり柳生家の方だけあって、真選組より見廻組の隊服の方が似合ってますね。」

コメンテーターの言葉を聞きながら総悟の顔はみるみるうちに不機嫌になっていく。
何が見廻組の隊服の方が似合ってますね、だ!
色が違うだけでデザイン全然変わんねーじゃねーか?!
それになんで真選組の一日局長やった九ちゃんが今度は見廻組の一日局長をやるんだよ?!
そう思っていたら携帯が鳴った。

ディスプレイに表示されていたのが九兵衛の名前だったので、総悟は慌てて携帯を手に取る。

「もしもし?!」

「総悟くん、おはよう。
ニュースは見たか?」

電話の向こうの九兵衛は恐る恐ると言った感じで聞いてくる。

「今見てまさァ。
どういうことか説明して下せェ!」
総悟は珍しく声を荒げていた。


結局、九兵衛から聞いた話だと、九兵衛が真選組の一日局長を務めたことで何となく真選組の高感度がアップしたので、松平がそんじゃいっちょ、見廻組の一日局長もやってよなんて軽い調子で頼み、だけど真面目な九兵衛はその話を真面目に受けた。

見廻組の佐々木はエリートなので、エリートの九兵衛のことはあっさりと受け入れたということらしい。
明日一日、九兵衛は見廻組の局長を務めるんだそうだ。

俺に相談もなく、そんな事を決めるなんて!
総悟はそれを聞いて憮然としてしまった。
松平にも腹が立つ。
なんで九兵衛がそんなことをしなきゃならないんだ。

真選組の一日局長を務めたことで、九兵衛は一般人にも関わらず広く顔が知られてしまい、せっかくの非番に二人で歩いていても、全然知らない男に
「柳生九兵衛さんですよね?
ファンなんです、握手してください!」
と声を掛けられる。
それがめちゃくちゃむかつく。

総悟はドSだからそういうヤツはおもいっきり睨んでやるが、睨まれてる方が九兵衛に会えた事で舞い上がって睨まれてることに気が付かないことがまたむかつく。

それに佐々木はいけすかないし、今井信女は殺人狂っぽいから、九兵衛にいきなり斬りかからないとも限らない。
それは阻止せねばならない。

それでも九兵衛は
「明日は見廻組一日局長だけど、明後日の総悟くんの誕生日は稽古も休むことにしたから、一日局長が終わったらそのまま総悟くんに会いに行くから。」
と言ってくれたので、我慢しようと思ったが、やっぱ無理だ。

「近藤さん、7月7日は七夕で、8日は俺の誕生日でさァ。
有休下せェ。
その代わり、プレゼントいらねェんで。」

「何いってんの?!
総悟、今年も俺からプレゼントもぎ取っていくつもりだったの?!」

近藤の絶叫は屯所の隅々にまで響いたらしい。
そうして総悟がプレゼントの代わりに、二日連続の有休をもぎ取ったのは至極当たり前のことだった。
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