銀魂

□花魁道中・漆
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「なんで姐さん、身請けを断ったのかな?
高杉様に坂本様に土方様に沖田様。
みんな、身請金用意するって言ったんでしょう?
なのに自分で借金返すからそれまで待ってほしいなんてもったいない!」
九兵衛の禿の一人、霞が口を開く。

「姐さんの間夫の土方様がいくら払うなんて言ったって、本当に身請金払えるわけないからじゃないの?
だって身請金が千両箱が45箱なんて聞いたことないよ。
あの高杉様でもすぐには用意できないって言ったくらいの額だもの。」
同じく禿の香。

「ちがうよ。
あんたらバカだね。
姐さんは土方様を本当に愛してるから断ったんだよ。
真選組副長のおかみさんが元遊女なんて外聞がよくないじゃないか。
それに姐さんの客には幕府の要人も多いんだよ。
姐さんを身請けした土方様にやきもち焼いて今までの客達が何かすることが怖いんだよ、きっと。
でもできるだけ土方様と長く一緒にいたいから自分で借金返すんだろ?」
禿の中では一番年上の朱里。

「バカはあんただよ!
そんなことこんなところで話すんじゃないよ!
誰が聞いてるか分からないんだから!」
と怒ったのは新造の春乃で

「それより、最近姐さんの稽古が厳しいよ…。」
と言ったのは突き出しを控えた菊乃。

「当たり前だろ、あんた来年には突き出しなんだよ!
池田屋の花魁・柳の独り立ちさせた遊女だってだけでお客様の期待は大きいんだよ!
でも柳姐さんはきちんとやれば、ずっと面倒見てくれる人だよ。
今だってあたしにもこづかいくれたし。
この間は桐山様にも啖呵きってくれたしね。
あんなにいい姐さんはいないよ。」
と言ったのは稽古に付き合ってた、九兵衛が一人立ちさせた遊女の春駒。

「春駒姐さんは柳姐さんにいいもの揃えてもらってたもんね。
水揚げの客も、側用人の北村様にしてくれたんだろ?
北村様いい男だもんね、羨ましいよ。」
羨ましそうな菊乃に
「あんたの突き出しの費用一切、坂本様がもってくれるらしいよ。
だからあんたの方が色々揃えてもらえるだろ?
何ていったって、あの快援隊の坂本様だもの。
宇宙から珍しいものとか取り寄せてくれると思うよ。」
春駒が逆に羨ましそうにしている。

「結局あれだね、柳姐さんが身請けされちゃったら、あたしたちもこんな風な生活はさせてもらえないんだよね。
他の姐さんはめったに小遣いなんかくれないって言ってたよ。」

春乃の言葉に他の全員が頷く。
「だって、紋日でも登楼客が絶えないのなんてうちでも姐さんくらいだもん。」

そんな事を話しながら菓子屋に向っていた九兵衛の禿と新造はふと足を止めた。

向こうから歩いてくる男は今までに一度も池田屋に登楼はしたことないけど、顔くらいは知っている、真選組の局長だったからだ。

「ねぇ、あれ、真選組の局長じゃないの?」
春駒の言葉に全員がそっちを見た。
「そうだね、あれは真選組局長だ。」
菊乃の言葉に
「そうだよね?
何しにこんなところに来たんだろう?」
春駒が首をかしげた。

「遊女を買いにきたんじゃぁないですか?」
霞の言葉に
「誰を?」
朱里が聞き返す。
「そこまではわかんないよ…。」
「柳姉さんを買いに来たんだったりして。」
「まさか!
部下が間夫してる花魁を買いに来るなんてありえないでしょ。」
そんなことを話しながら六人はお菓子を選んでいた。
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