銀魂

□幸せのスガタ
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「仕事決めてきた。」

九兵衛は、帰ってきた高杉晋助…今は変名で『谷 梅之助』と名乗っているの言葉に
「どんな?」
と聞き返していた。


クーデターの最中、九兵衛は高杉と一緒にその場を逃げ出した。
クーデターの結果も見届けないままで。

手が回る前にと高杉も九兵衛も貯金は全部引き出してとりあえず、江戸を離れてその日は連れ込み宿に宿泊した。

そこで二人はたくさん話をした。
九兵衛は勢いで高杉を連れ出してしまったが、その後どうするかなんて全然考えていなかった。
高杉の方が九兵衛に連れ出された割には具体的に色々と考えていた。

できるだけ公共の乗り物を使わないでまずは江戸を離れること。
とりあえず宿を転々としながらクーデターの結果が出るのを待つこと。
それ次第で、対応が変わる…高杉はそう言った。

そして、結果はあっさりと出た。
クーデーターは成功でも失敗でもなかった。
幕府と攘夷浪士が手を組んだ、新政府が立ち上げられたのだ。
天人と対等に渡り合える国を作っていこう、そういう目標の基に幕府も攘夷浪士も一つになることになった。

今まで幕府からのお尋ね者だった高杉は、それを受けてもう追われる身ではなくなった。
鬼兵隊bQの河上万斉ですら、新政府で参議になることになったのだ。

もちろん、九兵衛も追われることはない。
それどころか、柳生家は新政府の中では一番の要職である左大臣に任命された。
これは新政府が軍事力を強くしたいと思っていることの現われだった。
剣術の名門柳生家を新政府の左大臣に任命することで、新政府の参加者の個人の力を高めようという狙いもあった。

だからこそ、高杉は江戸に帰るわけに行かなくなった…そう思った。
新政府が天人と渡り合える強国をつくるという目標を掲げたのはいいと思うが、九兵衛が見つかったら連れ戻されるに決まっている。
柳生家の現当主・輿矩より、九兵衛の方が剣の腕が上なのは誰もが知っていることだからだ。
それに左大臣家の一人娘が行方不明じゃ格好もつかないからあちらも必死で九兵衛を探すだろう。

でもそんなことはさせない、絶対に。
だから高杉は宿を転々としながらたどり着いた、ここなら政府の人間は来ないだろうと思った村に腰を落ち着けることにした。

家賃の半年分を前払いしたことで保証人なしにかりることができたのは家というよりは小屋と言ったほうがいいくらい粗末なものだったが、高杉も九兵衛も二人だけで生活できることの幸せの方が大きかった。
だから、長州の大組士で裕福な生活を子供頃からしていた高杉も、名家柳生家のたった一人しかいない子供で、やはり裕福な生活をしていたはずの九兵衛も、こんな家でも文句を言うこともなかった。

そして、引き出した金額はまだ大分残ってはいるものの、先のことを考えて高杉は仕事を探していたのだ。
今までは実家と、鬼兵隊の手下に悪事を働かせて得た資金があったけれども、もうどちらにも頼れない。
そして九兵衛も実家を頼れない以上、働くしかないのだ。
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