銀魂

□Last Moment Ver.銀魂
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「九ちゃん。」

俺の腕枕でうとうとしてる九ちゃんのことを呼んだら、九ちゃんは重たげにまぶたを上げて俺を見た。

「なぁに?」

声も眠そうだ。
当たり前か、真選組の隊士たちに稽古をつけに来てくれた九ちゃん。

疲れてるのは分かってるのに、それを稽古が終わった後、自分の部屋に連れ込んで抱いた。
九ちゃんを部屋に連れ込んだのは16時くらいだったけど、もう20時近くになる。

その間、うとうとしても目を覚ませばまた九ちゃんを抱くを繰り返した。

だって不安だ。
人間は、人は、俺の大事な存在は。
いつだって簡単にあっさりと、俺を置いていってしまう。
俺を一人にしてしまう。

今は俺を愛してる…そう言ってくれる九ちゃんだってきっと、いつか俺を置いていってしまう。

他の男のことを好きになるかもしれない。

セレブな柳生家の事だ、俺みたいな田舎侍は捨ててセレブな男と結婚するかもしれない。

俺はこんなに九ちゃんを愛してるのに…九ちゃんは俺をいつまで愛してくれるか分からない。

だって、いつだって俺の大事な存在は俺を一人にする。
だから俺は、強がっていても本当は寂しい。
寂しいのに…いつかは九ちゃんも俺を一人にするんだろうか?
一人ぼっちにするんだろうか?

「総悟くん。」

九ちゃんを起こしたくせに黙ったままの俺のことを、今度は九ちゃんが呼ぶ。

「なんでィ?」

九ちゃんの手が俺の肩に触れる。
微かに残る刀傷の跡をそっと撫でる。

「痛かった?
この傷がついた時?」

「覚えてねェや。
攘夷浪士と斬りあいなんざ、しょっちゅうですからねィ。」

「ねぇ総悟くん。
僕が毎日、どんなに不安でいるか知ってる?
総悟くんが攘夷浪士と斬りあって怪我をしたらどうしよう、もし、もし総悟くんを失うことになったらどうしよう…。
いつも不安で不安で、だから僕は総悟くんの背中を守れるくらい強くなろうと思ってる。
いつでも総悟くんを守れるように。
そして、総悟くんがいなくなっちゃうかもしれないっていう不安に勝てるように。
僕は総悟くんが好きだから総悟くんのそばにいたい。
ずっと一緒にいたい。
そして、一分・一秒でも総悟くんより長く生きていたい。
総悟くんは一人になるのが寂しいんだろう?
だから、僕は一分・一秒でも総悟くんより長く生きて、総悟くんを見送るよ。
僕は総悟くんを一人にしないよ。
総悟くんより少しでも長く生きて、総悟くんを見送って…そうしたら総悟くんは一人じゃないだろう?」

九ちゃんは俺の傷を撫でながら眠そうな声で、眠そうな顔で、それでもじっと俺を見てた。

「九ちゃん…」
俺は九ちゃんの言葉に驚いて九ちゃんの名前を呼ぶ。

「もちろん、総悟くんを見送った後、他の人と生きていったりもしない。
最後の瞬間までずっと、ずっと総悟くんを想い続けるよ。」

九ちゃんは微笑んだ。
なんで九ちゃんは俺の欲しいものが分かるんだろう?
なんで九ちゃんは俺の欲しい言葉が分かるんだろう?

だけど、一つだけ俺にも分かることがある。
俺は九ちゃんを好きになってよかった。
本当によかった…。

「九ちゃん、俺、九ちゃんを愛してまさァ。
大好きでさァ。」

俺は九ちゃんを抱きしめる。
九ちゃんの手が俺の髪を撫でる。

「僕もだよ。
ずっとずっと、総悟くんを好きだよ。」

九ちゃんと出会えてよかった。
九ちゃんを好きになってよかった。

俺が永遠に眠るその瞬間まで、きっとずっと、九ちゃんの気持ちは俺に寄り添っていてくれる。
だから俺は、その瞬間までずっと幸せでいられるだろう。

そして俺の気持ちもずっとずっと、九ちゃんに寄り添ってる。

もう、俺は、一人じゃない。

END

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