銀魂

□幸せのヒカリ
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「柳生九兵衛を探して江戸に連れ戻せ、だと。
今日の警察組織会議で新政府からの通達だって言われた。」


鬼兵隊が城に乗り込むというクーデターを起こして、けどそれがきっかけになって幕府と攘夷派が手を組むことになって新しい政府が発足してから三年が経っていた。

将軍はもちろん、幕臣の中でも主だった家のものや、攘夷派の人間は新政府の中でも要職についている。

攘夷浪士だった桂小太郎や、河上万斉なんかがいい例だ。

真選組も見廻組も今は新政府の元で武装警察として機能している。

佐々木は幕府を裏切って鬼兵隊に付いたが、国を思う気持ちは自分達と一緒だったとして、茂々様は佐々木を咎めず、そのまま見廻組局長を務めている。
土方とは相変わらず犬猿の仲だが。


そして今日は新政府の警察組織の会議があった。

近藤はそういう会議には出席しない。
そういう会議に出席するのは真選組の頭脳である土方の方が、適任だからだ。

その土方が戻ってきて、会議の時に会った佐々木の愚痴を一通り近藤に言った後、『通達』と書かれた書類を近藤に渡しながら言ったのが、九兵衛を連れ戻せという内容だった。

「は?
なんで…?」

近藤は土方に聞き返していた。

「なんでって…柳生家は左大臣に任命されてる。
その柳生家の次期当主が行方不明のままはまずいだろうっていうのが新政府の考えだ。
それに柳生家だって跡取りが必要だろ。
だから柳生九兵衛を連れ戻して適当な名家の息子と結婚させて子供産ませる…大方そんなところだろ?」

「はぁ?!
今更なに言ってんだ、もう九ちゃんの子供は2才くらいになってんだろ?
幸せに暮らしてるっていうのに…」
言いかけて近藤ははっと口を噤む。

反対に土方の方は瞳孔を開いて怒鳴っていた。
「近藤さん、あんた何でそんな事を知ってんだよ?!」

それで結局、近藤はずっとずっと、妙にでさえ秘密にしてきたことを土方に話すことになった。


「京都の二条城の近くで九ちゃんは暮らしてる。
夫は高杉晋助、子供もいる。
九ちゃんが子供を産んで半年くらい経った頃、高杉は子供相手の剣術道場を開いて、剣術以外にそろばんや読み書きなんかも子供たちに教えてるそうだ。
九ちゃんもそれを手伝いながら、自分の子供を育ててる。」

「あんたそんな大事なことをなんで今までずっと黙ってた?!」

「だって高杉は、今はもう、おたずねものじゃないだろう?
確かにやってきたことは過激だったが、今はもう犯罪者として国は扱っていない。
それに二人とも幸せそうだったから…邪魔したくなかった。
だって俺、忘れられないよ。
柳生家にお妙さんを助けようと乗り込んだ時のこと。
男顔負けに強い女が強くて優しい女の子になりたかったって言いながら泣いてるあの涙、痛々しくて見ていられなかった。
忘れられなかった。
あの後だって結局、九ちゃんは女の子としては生きられず、幕府のためにあのクーデターの時だって城に駆けつけたじゃないか。
女なのに男のかっこうして刀もって。
その九ちゃんが女として幸せに暮らしてるんだ。
結婚相手があの高杉晋助でも応援したくなるじゃないか。」

近藤の言葉に土方はため息をつく。

「とにかく、こっちの事は総悟に任せて俺たちは京都に行こう。
全警察組織が柳生九兵衛の事を探すことになったんだ、いずれ柳生の居場所を誰かが掴むだろ。
とにかくその前に柳生に話をしにいく。」

土方の言葉に近藤も立ち上がった。
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