銀魂
□闇に射し込む光
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「晋助…何を考えている?
城に乗り込もうとでも考えてるのか?」
九兵衛はベッドの上で体を起こす。
高杉は九兵衛の声に振り返った。
「お前には本当にかなわねぇな。
俺の考えがお前は読めるのか?」
「いつもと違うから、何かたくらんでるんじゃないかと思っただけだ。
そんな事、なんでする必要がある?」
九兵衛の体にかけていた布団がずり落ちて、白くて細い肩が露わになる。
高杉はそれを見て口角を上げた。
もう一度九兵衛のいるベッドに戻り、腰掛ける。
「なんで?
僕がそばにいても、お前はこの世界を壊したいと思うのか?
この世界は腐っていると思うのか?
僕じゃ、お前の世界に光を射すことはできないのか?」
そんな高杉に九兵衛は潤んだ目で訴える。
世界は腐ってると思っていた。
だからこの世界を壊さなければならないと思っていた。
だけど九兵衛と出会い、恋をして、高杉の世界は変わった。
九兵衛がいるのなら、この世界も悪くはない、そう思うようになった。
ふと気が付くと、この世界に対する憎しみを忘れて、九兵衛とこのまま一緒に生きていくことを望んでいる自分がいる。
だけど、そんな事は許されない。
大事な大事な恩師を、あの人を奪ったこの世界を自分は許してはいけないのだ。
幕府は倒されるべきだ。
否、倒さなければならない。
それに九兵衛は幕府に仕える柳生家の次期当主。
願っても祈っても、そもそも九兵衛と自分が一緒になる事だって叶わないことなのだ。
「愛してる。
晋助、僕は晋助を愛してる。」
ベッドに腰掛けた高杉に九兵衛が手を伸ばす。
その手はそっと高杉の頬に触れ、そして九兵衛は高杉に抱きついてきた。
「それでも世界は腐ってるか?
お前には、世界は腐ってるようにしか見えないのか?」
高杉は九兵衛をギュッと抱きしめる。
「俺も、てめえを愛してる。
てめえを愛する気持ちは本当だ。」
高杉は九兵衛にそれしか言えなかった。