銀魂

□誰にもお前を渡さないSide土方
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「この間決まった児童教育学科との合コンなんだけどさー、高杉さんこねぇーんだって。
高杉さんこねぇなら合コンする意味なくね?!」

俺はギャーギャー騒ぐ南戸を北大路と一緒に冷たい目で見た。
賑わう学食の中でこんなこと大声で叫ぶなんて、こいつどうかしてる。
回りも何事かとこっちを見てるから俺と北大路は仕方なく周囲の人に軽く頭を下げた。
そして南戸を睨みつけたが、南戸は俺たちの視線に気がついていない。

っつか、こいつバカだ。
仮に兄貴が合コンに行っていいって言ったって九兵衛が行くはずない。
こいつは九兵衛に気があるようだが、九兵衛は俺と付き合ってるんだからな。
人には言えないけど。
そんな事を思って黙ってるに俺にかわって、北大路が大げさなため息をつく。

「来るわけないだろう、彼女は既婚者だぞ。
だからお前の顔は男性器みたいなんだな。」

「いや、お前も食事中にそんなこと言うのやめろよ!」
その言葉にびっくりして俺は思わず北大路にそう言ってしまった。

その時、学食がざわめいた気がして、俺たちは顔を上げる。
学食に九兵衛とその友達が入ってきた所だった。

九兵衛は大学でも有名人だ。
毎朝、高そうな車で男に送ってもらってる。
その男が彼氏じゃなくて旦那で、高校生の時に結婚したと知れば、回りが興味を持つのは当然の事だ。
それに本人の容姿も目立つ。
高校で一緒だったから九兵衛が実は剣道が強いことを知っているが、体つきは華奢だから男から見れば守ってやりたいと思う。
眼帯してるとはいえ顔立ちは綺麗だし、色は白いし、肌も髪も綺麗だ。
そして凛々しいのにどこか儚げで、幸せそうなのにどこか陰があって、清楚な雰囲気なのに色気はある。
相反するものが混在するところがいいとあいつの事を言ってる男は多い。

「花子ちゃーん!!
こっち空いてるよ!」
席を探してる九兵衛たちの中にいる友達の一人の名前を南戸が呼ぶ。
合コンするとかいう話で南戸と盛り上がってた女の名前だ。
南戸に気がついた女が手を振ると、九兵衛たちはなんだか話していたが全員でこっちに来た。

「ここ座っていい?」
花子と呼ばれた女がそう聞く。
俺らの座ってた周りは空いてたので、そのつもりで南戸は九兵衛たちを呼んだんだろう。
とーぜんと南戸は笑い、九兵衛たちはそこに座った。

その時、俺の向かい、北大路の隣に座った九兵衛からふんわりといい香りが漂ってきた。
俺の上げたトレゾアの香りだった。
兄貴にもらったものじゃなく、俺のあげた香水をつけてくれてると思うとそれだけで嬉しくなった俺だが、すぐに目を丸くする。

「高杉さん…九ちゃんって呼んでいい?
いい匂いだー。」
南戸が九兵衛に向かってそう言ったからだ。
九兵衛は困ったような顔をしてる。

こいつ本当になれなれしいやつだな!
気が合うし、嫌いじゃないが九兵衛と何とか仲良くなろうとしてるところはすげぇむかつく。
「お前、コイツ困ってんだろーが!」
俺の声が低くなる。

その時、
「九ちゃん、ご飯取りにいこ。
かばん見ててね!」
九兵衛と一番仲がいいギャル女がさりげなく九兵衛を連れ出してくれた。
他の女たちも一緒にメシをとりにいって、俺たちは女たちのかばんを見張りながら残りの飯を食い始めることになった。
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