銀魂

□お願い、つき放さないで
2ページ/7ページ

ニコニコと笑みだけ浮かべながら、九兵衛は心の中で(この狸爺!)と松平のことを罵っていた。

同伴で連れてこられた料亭、案内された部屋には真選組皇帝ソーゴ・ドS・オキタV世閣下がいたのだ。
テロリストになった真選組との話し合いをスムーズにするために松平は総悟の指名キャバ嬢が自分なのを知っていて、今日のこの同伴を決めたのだろう。
そして総悟の用事とはこの話し合いの事だったのだろう。
本当に食えない男だ、松平片栗虎という男は。

「ど〜も、待たせちゃったねぇ。
そんでさぁ、とりあえずテロリストはいいんだけど、城攻めるのはやめてくんない?」
松平はそう言いながら座り、その隣に座ろうとした九兵衛に
「あ、彼の隣で酌してやって。」
と言う。

(テロリストはいいんだけどって…いいわけないだろう!)
と思いつつも、九兵衛は言われたままに総悟の隣に座り、
「総悟様、日本酒でよろしいですか?」
と聞く。
「ああ。」
九兵衛が注いだ酒を一気に飲み、総悟は松平を見た。

「それなら無血開城してくれるということですか?」
「お前、ただでかい城がほしいだけだろ?
けど、お前らが城攻めちゃうと九兵衛もキャバ嬢やめて戦うことになっちゃうよ。
ほら九ちゃん、幕府に仕える柳生家次期当主だからして。
幕府になにかあったら馳せ参じるのがつとめだから。
お前ら、九ちゃんがそんな事になっていいのかな〜?」
松平は手酌で酒を飲み、九兵衛に向かって
「ね?」
と微笑みかける。

松平の言いたいことが分かった九兵衛は総悟に体を密着させて、
「そうなんです。
家を出てるとはいえ、一応、これでも跡取りですから。」
と少し甘えた口調で言ってみた。

今、父が自分を無理に連れ戻さないのは、自分がきちんと稽古はしている事と、テロリストとはいいつつも、真選組は自分達以外のテロリストはいらないとばかりに、他のテロリストもとい、攘夷浪士を排除しているからだと思う。
でも、もし真選組が将軍の住む城を攻めようとしたら、父の輿矩は九兵衛を無理やり家に連れ戻すだろう。
将軍家を守るのが柳生家の勤めだからだ。
そして連れ戻されたら、きっとそのまま土方と別れさせられてしまう。
だから必死だった。

「…分かった。
仕方ない、城を攻めることはやめる。」
総悟はしばらく考え込んでいたが、やがてそう返事をした。

「さすが総悟様ですね。
本当に嬉しい!」
九兵衛はわざと大げさに言って総悟の腕に甘えるように自分の腕を絡ませた。
「ま、皇帝はそれくらい度量が広くなくちゃだめだな。」
松平もほっとしたようにそう言った。
「勘違いするな、九兵衛のためだ。」
「皇帝ったら…そんなこと言われると嬉しい!」
そう言いながら、九兵衛は心底ほっとしていた。
これでまだしばらくは土方と一緒に暮らしていけると思うと嬉しかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ