銀魂

□クリスマスの夜に咲く花
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夏が終わって秋が過ぎ、季節は冬になった。

俺と九兵衛さんの関係は相変わらずだ。
一緒に出かけたり、二人で過ごす時間も増えたけど、4人の邪魔者…じゃなくてライバルの妨害もある。

それに、俺自身に九兵衛さんを急かすつもりがないんだ。
14才の時からずっとずっと、死んだ桂という男を想い続けてきた九兵衛さんだ。
そんなに短時間に全てをふっきり、俺を好きになったりは出来ないだろうと思うから俺も焦らないで少しづつでもゆっくり関係が進んでいけばいいと思ってる。


だけど、クリスマス位は一緒に過ごしたい、そう思うのも自然なことなのではないかと思う。
クリスマスイブは土曜日で仕事だが、クリスマス当日は日曜日で仕事休みだ。

11月の半ば頃、俺は風邪をひいて寝込んでしまった。
その時、彼女は三日間、毎日俺のアパートに通って俺の看病をしてくれたんだ。
そのお礼だと言ってクリスマスに約束を取り付けて、プレゼントを渡す。
不自然じゃなく、恋人達のイベントを過ごせる絶好のチャンスだと思っていた。

なのに、12月に入ってすぐの店での朝礼でオーナーの言葉に驚いた。

「今年のクリスマスは日曜なので、日曜も営業して翌日の26日を振り替え休日にします。
予定があって休みたい人は二週間前までに言って下さい。」

オーナーの妹で店の1の九兵衛さんが店を休んで俺と会ってくれるはずがない。
俺は結局26日に彼女を誘って、25日は仕事に出ることを選んだ。


だけど、26日に会えないかと聞いたら彼女は言ったんだ。
「ごめん、クリスマスだけはお兄ちゃんと二人きりで過ごすことにしてるの。
両親が亡くなってからずっと、クリスマスだけはお兄ちゃんと二人ですごすのが決まりなの。
今年は25日が仕事だから26日はお兄ちゃんと一緒に出かけることになってるから。」
って。

両親が亡くなってから、オーナーは九兵衛さんを育てるためにお金が必要で昼も夜もバイトをしまくってて、彼女と過ごす時間はあまりなかったらしい。
クリスマスっていうのは恋人たちにとっては甘い時間をすごすことが出来る日だけど、幼い子供がいる家族にとってもご馳走を食べてサンタについて話して…家族団らんを楽しめる日だろう。
だけど両親がいない彼女にはそんな事はもう出来ない。
だからその分、オーナーが父親も母親も兄も全ての役割をしてくれた唯一の日なんだそうだ。

その日だけは本当に兄妹二人だけで過ごすんだそうだ。
そういわれたら何も言えねぇ。

結局、俺はクリスマスに彼女と過ごすことは諦めた。
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