銀魂

□三千世界の鴉も愛す
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総悟と九兵衛の婚約は当初の予定通り、一ヵ月後に親族の簡単な顔合わせが行われた後、発表された。

ただ、結婚の時期については未定というのが、当初の予定と違う部分だった。
なぜ結婚の時期が決まってないのかについては、
『柳生家の次期当主として、まだ学ばなければならないことがたくさんある。
まずはそちらの方に全力を尽くしたいという九兵衛の希望を総悟が受け入れたから。』
と説明された。

真選組の中でも特に破壊行為の好きな男というイメージの沖田総悟が柳生の若様を射止めた事をマスコミは奇跡と報じて、一時、このニュースは江戸を騒がせた。
そんな報道も落ち着いてきた、夏の頃。
城に呼ばれていた輿矩が真選組の近藤と土方を連れて戻ってきた。


訝しげな顔をする九兵衛に告げられたのは、上様がどうしても江戸の町一番の大きな祭りであるかぶき町の祭りに行きたがっている。
しかし、あくまで大げさな護衛をつけたりせず町民のように楽しみたいというのが上様の希望。

それで上様と恋人同士を装って九兵衛に上様の護衛をしつつ、祭りを案内してもらいたいという計画を立てたので協力して欲しいといういうことだった。
祭りには毎年テロを警戒し真選組も警察とともに護衛にあたるし、今回は私服姿の真選組隊士も何人も二人をこっそりと護衛するという。
そもそも、ごく一部しかこの事を知らないので九兵衛の負担は大きいかもしれないといわれたが、九兵衛はそこらへんの攘夷浪士に負けない自信もある。
そもそも上様の希望であれば、柳生家としては逆らったりしない。
九兵衛は二つ返事でそれを受け入れた。

自分の大切な婚約者がそんな事をすると聞いた総悟は近藤に抗議をしてみたが、もとより抗議してもそれが通るとは思っていない。
どちらかというと私服で上様と九兵衛の護衛につくことが目的で、近藤もそれを受け入れたので、総悟は私服護衛組に回った。
これで一番近くで九兵衛を守れる。
自分がそばにいる限り、九兵衛を危険な目に絶対合わせたりしない。

九兵衛はまだ高杉を忘れられなくても、高杉とともに生きることは選ばなかった。
そして、婚約の発表も控えようと言った総悟に
「時期が明確になっていなくてもいいのなら、婚約は発表しても構わないよ。
どうせいつかは君と結婚するだろうから。」
と九兵衛は言ってくれたのだ。
そんな大事な婚約者を危険な目に合わせてたまるか、総悟の決意は固かった。
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