銀魂

□恋愛電車
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総悟は、足早に歩いていた。
今日は家を出るのが少し遅れた。
彼女を待たせてるんじゃないか、そう思ったから急ぎ足で歩いている。

以前から気になっていた恒道館女子に通う彼女。
先週、春雨高校のやつに絡まれてるところを助けようと近づいて行った事で、学園祭に誘われて、携帯番号とメールのアドレスを交換することが出来た。

彼女……名前は柳生九兵衛。
最寄駅は同じだから家も近いのかなとは思っていたが、本当にご近所だった。
総悟の家の近くに大きな家がある。
柳生コーポレーションという大きな会社の会長と社長が住んでいる家だ。
彼女はそこの一人娘だった。

あの日、電車の中でも九兵衛が降りるまでずっと話をして、家が近いことが分かって、待ち合わせして一緒に駅に行くことになったのだった。

5ヶ月も、彼女を見つめるだけの日々を続けていた。
それが、いきなり待ち合わせして一緒に駅まで行き、駅から一緒に電車に乗って電車の中でも彼女が降りる駅まで色々話をすることが出来るようになったのだ。
あの時、彼女に絡んだ春雨高校の生徒に総悟は心から感謝していた。

九兵衛と待ち合わせをしてるコンビニが見えてきた。
九兵衛は雑誌コーナーで何かの雑誌を立ち読みしているので道を歩いている総悟からよく見える。
その姿を見ながらいつ見ても彼女は綺麗だ、そう思う。
だって他にも雑誌を立ち読みしてる女子高生はいるが、彼女はその中でも特に目立っている。
総悟はにやけそうになる顔を引き締めながらコンビニに入っていく。

九兵衛はコンビニのドアが開いたのに気がついてもしかしたら総悟がきたのかと思い、ドアの方に視線を向けた。
そこにいたのが総悟だったので、笑顔になる。

5月に入ってすぐくらいだろうか、駅のホームで彼を見かけるようになったのは。
明るい色の髪に整った女の子みたいに綺麗な顔立ち。
始めて見た時、綺麗な男の子だなぁと思った。
それから毎日見かけるようになって、気がついたら意識するようになっていた。
だけど、恥ずかしくて声をかけることなんか出来なくて。
胸元のネームプレートを見て、沖田という名前を確認するくらいしか出来なかった。

ただこっそり見つめるだけの日々を5ヵ月も続けた。
でもなんとか近づきたくて、思い切って学園祭に誘ってみようと学校から配布されたチケットを持ち歩いていたけど、誘う勇気がどうしても出なくて…。
そんな時、春雨高校の制服を着た男子に絡まれていたら憧れの沖田くんが自分を助けようとしてくれたのか、近づいて来てくれた。
すごく嬉しかった。
その上、いつも同じ時間の電車に乗ってることを話したら、あんたがいるからねと言ってくれたのだ。
だからその勢いで学園祭のチケットを渡したら受け取って絶対に行くと言ってくれて、携帯の番号とアドレスまで交換できた。
しかも家が近いことまで分かって、今はこうして待ち合わせして駅まで一緒に行っている。

「九ちゃんごめん、待たせやしたねィ。」
そう言って自分に声をかけてきた総悟に九兵衛は満面の笑みを浮かべて答える。
「ううん、僕、総悟くんを待つの好きだよ。
だって会うために待ってるんだから、待つのも楽しいよ。」
九兵衛の言葉に総悟の顔が赤みを帯びる。
その総悟の顔をみて、九兵衛も恥ずかしくなって赤面して俯いてしまう。

けど、次の瞬間、総悟に強く手を握られた。
「それじゃ、行きやしょう。」
「……うん!」
総悟と手をつなぎながら九兵衛は思う。
やっぱり、総悟くんが好きだなぁと。
同じことを総悟くんも思ってくれてるといいな。
手を繋いでくれたってことは、きっと同じ気持ちでいてくれてるよね。
そうでありますように。
九兵衛は願いながらは微かに赤みを帯びた総悟の顔をそっと見上げた。

九ちゃんの手はちっけぇなァ、そう思いながら総悟は九兵衛の手を握っていた。
小さくて、柔らかくて、自分の手と違う。
恒道館女子の学園祭は、後夜祭でフォークダンスがあると聞いている。
その時に告白しよう、総悟はそう思っている。
でも、もう十分に俺の気持ちは伝わってるはずだよな。
だってこんなに九兵衛を好きで、その気持ちは溢れ出して止まらない。
だからきっと九兵衛にも届いてると思う。

満員電車に乗って学校に行くのがこんなに楽しいと思えるのは隣に九兵衛がいてくれるからなんだから。

END

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