銀魂

□盛々様との逢瀬にて
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そうしてる間に劇が終わる。
スタンディングオベーションの後、役者が舞台に出てくる。

「すごかったね、お姉ちゃん。
面白かった〜。」
自身も立ち上がって嬉しそうに九兵衛に話しかける。
「そうですね。
盛々様が楽しかったのなら何よりです。」
盛々様に微笑みかける九兵衛に盛々様は
「柳生のお姉ちゃんは楽しかった?
僕が知りたいのは、柳生のお姉ちゃんが楽しかったかどうかって事で、僕のことじゃないよ。
僕は柳生のお姉ちゃんに楽しかったって言ってもらいたくて今日、ここに来たんだよ。」
と言った。

「いやぁ、お子様なのにさすがセレブ。
言うことが違いまさァ。
ねェ、土方さん。」
総悟がいちいち言うことが癇に障る。
土方は黙ったまま総悟を睨みつけた。

その時、
「副長、車の準備が出来ました。」
土方の耳にかけたインカムから山崎の声が聞こえてきた。
「分かった。」
土方はそう答えると盛々様と九兵衛に近寄っていく。
ああむかつく、そう思いながら
「盛々様、お車の準備が出来たそうです。」
と声をかけると盛々様は
「ありがとう。
柳生のお姉ちゃん、行こう!」
と九兵衛に向かって手を差し出した。

(このガキっ…!)
と心の中でだけ叫び、土方はボックス席を誰より先に出る。
怪しいやつがいないか、確認するためだ。
いるのは警護に当たっている真選組の隊士だけなので、土方はホッとして
「どうぞ。」
と中に声をかける。

土方が先に出て、手を繋いでる二人がその後に続き、二人の後ろを総悟が歩く。
分厚いじゅうたんが敷き詰められた廊下を歩いていると、向かいから販売員が二人、大きなワゴンを押してくるのが目に入る。
随分でけぇワゴンだな、土方はそう思っていた。

しかし、すぐに後ろで交わされる会話に注意がそれた。
「今日行くの料亭は夜になるとお庭が綺麗なんだって。」
「そうですか、それは楽しみですね。」
「本当?!
本当に楽しみにしてくれるの?!」
九兵衛の返事に盛々様の声が弾む。

本当に忌々しい、そう思って舌打ちをしそうになった土方は、販売員とワゴンとすれ違うために、少しだけ体を壁側に寄せた。

その途端、いきなり販売員が土方に切りかかってきた。
「てめ、何モンだ!」
不意打ちとはいえ、真選組の鬼の副長。
土方も即座に刀を抜いて男の攻撃を防ぐ。
「総悟ォォ!
盛々様をお守りしろ!」
「もちろんでさァ!!」

しかし、ワゴンの中からも男が飛び出てきた。
販売員だと思っていたのは攘夷浪士で、ワゴンの中にも男が潜んでいたため、襲ってきたのは四人だ。
しかも、腕の立つやつらで、土方も総悟も防戦するので精一杯だった。

訪問着姿で帯刀もしていない九兵衛の事も守らなければならない。
「応援寄越せ!!
ボックス席を出たすぐの所で襲撃を受けてる!」
土方はインカムに向かって叫ぶ。
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