銀魂

□君がため
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「また子。
何の用でござるか?」
そこにいたのは来島また子だった。
また子は高杉に心酔しきっているので、当初、九兵衛がこの船に連れてこられ、高杉の部屋で過ごす様になってからは、九兵衛に何か危害をくわえるのではないかと心配もしていたが、そんな事はなかった。
むしろ、あの高杉をそこまで惹きつける九兵衛と仲良くしたいとさえ思っていそうだった。
高杉が自室に入れるのを許可しているのは万斉だけだが、九兵衛に食事を運んだり、着る物を渡すのはまた子の仕事で、その時にまた子の方から九兵衛に色々と話しかけていることは万斉も知っている。
「また、晋助様の部屋にいくんスか?」
また子は万斉の前まで歩いてきて足を止めた。
視線は万斉が持っている小さな箱にある。
「そうだが…なにか問題でも?」
なんとなく咎められてる気がして、万斉の口調はついきついものになってしまう。
「最近、晋助様がいない時は晋助様の部屋に入りびたりじゃないッスか。
鬼兵隊のbQがそれじゃ示しがつかないッス。
晋助様がいない時こそ、万斉先輩がしっかりしないといけないんじゃないッスか?
っつても、下っ端は万斉先輩が晋助様のいない時に、晋助様の部屋に入り浸りな事に気がついてないみたいだし、そんな事にも気がつかせないように、万斉先輩も抜かりなく小細工してるんでしょうけど、私は騙されないッスよ。」
非難するようなまた子の口調に万斉はかちんときてまた子を睨み返した。
「仕事ならきちんとやっている。
ぬしに文句を言われる筋合いはない。」
万斉に睨まれてもまた子は動じない。
「あの人は晋助様の大事な人ッス。
晋助様の大事な人は私にとっても大事にすべき人ッス。」
九兵衛の事を言っているのだろう、万斉には分かったがあえてそれには触れず、
「そうか、ならぬしはもっと拙者を大事にすべきでござるな。」
と言い捨てるときびすを返した。
その万斉の背中にまた子が叩きつけた
「あの人は晋助様のものッス!
いい加減に目を覚まして欲しいッスね!」
という言葉が耳に残って離れなかった。

バカなことを…そんなに簡単に目が覚めるものなら、もうとっくに覚めている。
万斉は小さく小さく舌打ちをして晋助の部屋に向かう。

ドアをノックすると
「開いてる。」
と九兵衛の声が返ってきた。
万斉がドアを開けると、九兵衛がベッドの上で三味線をいじっていたが、入ってきたのが万斉だと分かると笑顔になって三味線を置き、万斉に走り寄ってきた。
万斉はドアを閉めると、走り寄ってきた九兵衛を抱きしめた。
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