銀魂

□雪の降る夜に…
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「クリスマスパーティをするから、24日はうちに来てね。」
と妙に言われた九兵衛はタクシーで恒道館に向かっていた。
とはいえ、パーティの開始時刻の七時からは一時間半ほど遅れている。
九兵衛はパパ上と一緒に幕府関係者の集まるパーティに出なければならなかった。
それで途中で切り上げてはきたけど、こんな時間になってしまったのだった。
本当は着替えたかったけど一時間半も遅れているのに着替えていったら二時間以上の遅刻になってしまうから、そうも行かず、九兵衛はパーティに出た格好のままだった。
白いカシミヤのファーのついたロングコートの下はロイヤルブルーのホルターネックでフルレングスのカクテルドレス。
足元はドレスと同じ色のベルベットで出来たハイヒール。
アップにした髪、服装に合うように若干濃い目に施したメイク。
東城も北大路も西野も南戸も似合うと笑って言ってくれたし、パーティでも色んな人から声をかけられたが、九兵衛は女として賞賛される事になれていなくて恥ずかしかった。
そんな恥らう様子がまた可愛らしいのだが、本人はその事に気がついていない。
だから着慣れてない、履き慣れてないこの格好はいくら妙といえども見せるのは気恥ずかしくて、着替えていきたかったのだ。
このまま行くと決めた今も、でも恥ずかしい…とかなんとかうだうだと考えてるうちに、タクシーは恒道館についてしまった。
パーティバックからカードを出して料金をカードで支払うと、運転手さんが笑顔で
「Merry Christmas!」
と言ってくれた。
なんだかそのことが嬉しくなって、九兵衛も
「Merry Christmas!」
と笑顔でタクシーを降りる。
パーティバッグは小さくてカードとコンパクトと口紅と携帯しか入っていない。
それだけでいいのだと東城に言われたからだ。
プレゼントなんて持っていけなかったから、事前に手配したケータリングの食事とケーキとプレゼントが恒道館に届いてるはずだ。
腕時計を確認して、足早に恒道館の門をくぐる。

玄関に行ってチャイムを押すと
「はぁ〜い!」
とご機嫌そうな妙の声がして、扉が開いた。
妙は一瞬だけ驚いた顔で九兵衛をみたが、その顔はあっという間に緩み、すごく嬉しそうな顔で
「すごーい、九ちゃん、めちゃくちゃ可愛いわ〜!!」
と叫んだ。
「ちょ、妙ちゃん!
声が大きい…」
九兵衛は慌てたが、すぐにどたどたと足音が響いて、チャイナ服にサンタ帽、白いひげを生やした意味不明な格好の神楽が駆けつけてきた。
「本当アル!
九ちゃん、めちゃくちゃ綺麗ネ!
そんな格好してどうしたアル!?」
「大方幕府のパーティにでも出させられててそのままきたってとこだろ?
しかし、この九兵衛の姿を見た時のやつの姿が楽しみだな。
ああ、あと美味いメシサンキューな。
おかげでダークマター喰わずにすんで、命拾いした。」
完全にサンタコスをしてる銀サンタも玄関に現れた。
「余計なことは言わなくていいんです。
死にたいんですか?」
極上の毒気を含んだ笑顔を浮かべる妙に銀サンタは冷や汗を浮かべて黙った。
「とにかくあがって!」
九兵衛には毒気のない笑顔を向けた妙に九兵衛も笑顔で
「お邪魔します。」
とドレスを軽くつまんであがりこむ。
普段が普段だけにそんな仕草も妙に女っぽくて、妙は自然と笑顔になってしまう。
そう、九ちゃんはこんなに綺麗で可愛い女の子なんだもの、女の子としての幸せを掴んでほしいわ…だから頑張ってよね!そんな思いを込めて妙は招待した人たちがいる恒道館の道場の方を睨んでいた。
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