銀魂

□君の強さ
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新八が強くなりたい、そう切実に願うようになったのは、竜宮城の事件の後だった。
戦闘部族である夜兎族の神楽が強いのは当たり前だけど、九兵衛は地球人の身でありながら、神楽の動きについていっていた。
銃弾を檻の鉄格子で弾き飛ばしながらそれに当たることなく廊下を駆け抜け、敵を倒し、城壁を登るなど、男の自分でさえ出来ない事をやってのけた。
自分だって恒道館の当主としてずっと剣の稽古をしてきたのに、幼い頃は弱くて泣いてたなんて信じられないくらい、九兵衛は強い。
それがすごく気に食わなかった。

新八は柳生家に乗り込んで、九兵衛が女だと知った時に、自分も九兵衛の幼い頃を知ってるのにどうして九兵衛さんが女だって忘れてたのかなと思った。
自分が幼すぎて忘れてたんだろうか?
でも九兵衛に会って剣を交えた後、徐々にその頃の記憶を思い出していった。
確かに九兵衛は女でいつも姉の後ろでべそべそ泣いていて、幼かった自分よりさらに泣き虫だったはずだ。
そんな彼女がたったの数年であそこまで強くなっていたことに驚く。
そして、その強い彼女が子供の頃は弱虫な女の子だった自分の記憶とのギャップに九兵衛を妙に意識してしまうようになっていた。
そんな時に竜宮城の事件があり、神楽と同等くらいに強かった九兵衛をみて自分ももっと強くなりたいと思ったのだ。
自分より強い女の人に
「僕が、貴女をずっと守ります。」
なんて言ったって、説得力がない。
それに、彼女は姉の事が大好きで、その姉の事を『強くて優しい』 と言ってた。
だから新八も『強くて優しい男』になりたい。
九兵衛には、自分の事を『妙ちゃんの弟の新八くん』ではなく、『志村新八』として見て欲しいと思うのだ。

そう、自分が強くなりたいのは九兵衛に男としてみてもらいたいから。
なのにその九兵衛に稽古を頼むなんて姉の
「新ちゃんより九ちゃんの方が強いのよ。」
という言外を感じてちょっと心が折れそうだ。
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