鬼滅の刃

□幸せになろう
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祝言を上げた夫婦がその日の夜の間に姿を消すという事件が発生している。
そのことで産屋敷邸に9人の柱が呼び出されたのは、三組目の夫婦が消えた翌日の事だった。

「結婚したばかりの幸せな男女が消える理由なんか、親族誰も心当たりがないのが三組のご夫婦に共通していてね。
それで、鬼殺隊でこの件を預かることになったんだ。」

産屋敷耀哉の言葉に悲鳴嶼行冥が
「承知。
この中の誰かが夫婦の振りをして祝言をあげ、鬼を誘き寄せれば良いな。」
と答えた。

胡蝶しのぶはそれなら仲の良い伊黒小芭内と甘露寺蜜璃が適役だと思っていたので、そのままを口にしようとした時、
「花嫁役は胡蝶が適任じゃねぇの?」
と宇髄天元にいわれ、目を見開いた。
「なぜ私なんですか?
宇髄さんのご意見を聞かせていただきたいですね。」
まさか自分が指名されると思わなかったしのぶは宇髄を笑顔で見る。

その笑顔の奥に
『なに余計なこと言ってくれてんですか、あんた』
というしのぶの気持ちを汲み取った宇髄はしのぶから目をそらす。
「いや、伊黒はこーゆー任務向かないだろ。
と言ったって、甘露寺が花嫁役やるなら、伊黒は新郎役やるって言い張るだろ?
ならもう最初から胡蝶が花嫁やりゃいい。」
しかし、宇髄はしのぶから目をそらしつつも、しっかりとした根拠だけは示したので、しのぶも納得するしかない。

伊黒小芭内に甘露寺との夫婦役などやらせたら、何かあった際に冷静な対処ができると思えない。
『冨岡義勇を笑わせよう作戦』の時に、甘露寺のために冨岡義勇に怒った伊黒小芭内を見ていたしのぶはそう判断せざるを得ない。

「わかりました、花嫁役はわたしが務めさせて頂きます。」
しかたなく、花嫁役をしのぶは了承する。
「きゃー!!
しのぶちゃんの花嫁さん姿、素敵だろうなぁ!!
キュンキュンしちゃう!」
「甘露寺の花嫁姿だって負けてないと思うぞ。」
蜜璃と伊黒のやりとりは全員がスルーした。

「南無、夫役はどうする?」
花嫁役が決まったところで、次は花婿役だ。

「わたしとしては、悲鳴嶼さんが花婿さんだと安心なのですが…」
悲鳴嶼はしのぶとカナエの恩人であり、同じ柱のメンバーとして、しのぶがもっとも信頼してる人だ。
柱歴もながく、鬼殺隊最強でもある。
これ以上、自分の相手役に最適な人はいない、しのぶはそう思ったが
「南無、わたしとしのぶでは年が離れすぎでは無いだろうか?」
遠回しに悲鳴嶼に断られた。

「まぁ、確かになァ!」
不死川が相槌を打つ。

「よもや、よもやだ!
それなら、俺が花婿をやろう! 」
そこに名乗りを上げたのが煉獄杏寿郎だった。

「僕、すぐ忘れちゃうからそういう任務できないし、不死川さんは傷だらけで花婿って感じじゃないし、冨岡さんも伊黒さんも花婿って感じじゃないし、宇髄さん奥さんいるし、それがいいよ。」
ずっと黙っていた時透無一郎が珍しく長く喋ったのでみんな驚く。
が、普段喋らないだけに時透の意見にみんな頷くことになり、煉獄・胡蝶の祝言(ふり)が決まった。

義勇は、その様子を黙って見ていたが、理由の分からない不快感を感じていた。
なにが不快なのか、わからない。
分からないけれど、この話し合いの内容は不愉快だと、そう思っていた。
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