進撃の巨人
□憎いのはお前だけ
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他の誰から見ても驚いてるようには見えないが、調査兵団団長エルヴィン・スミスは実はとても驚いていた。
ハンジが
「リヴァイの躾でエレンがぼっこぼっこにされちゃったよ!」
と本部にエレンを連れ帰ってきたと聞いて、エルヴィンは医務室に足を運んだ。
そこで見たエレンはぼっこぼっことはいえないと思うけれど、確かにそれなりの怪我はしていた。
顔は腫れあがって、肋骨が何本か折れているらしい。
だけどエルヴィンが驚いているのはそこではなくて、目が覚めたエレンが
「ペトラさんはどこですか?!
ペトラさん!」
と取り乱したことにだった。
結局医療班の判断で沈静効果のある薬物を投与して強制的に眠らせたけれど、その間にエレンの折れてた肋骨はくっついてしまったそうだ。
巨人化の再生能力の速さは素晴らしいといったところか。
そしてエレンがペトラ・ラルの名前を叫んだ事にも驚いていた。
二人の間に…というか、少なくともエレンの方にはペトラに対する特別な感情があるとしか思えない。
これはどういうことだ?
驚いてるように見えないけれど驚いているエルヴィンにリヴァイから報告のためにと遣わされたエルドが
「兵長が言うにはエレンはペトラに自分の母親を見ているようなんです。」
と告げてきた。
エレンは目の前で巨人に母親を殺されている。
そしてペトラが優しい女性だということはエルヴィンも知っている。
だけどペトラに母親を見るのは年齢的に無理があるんじゃないか…エルヴィンはエルドの報告にそう感じた。
感じたけれど、薬物で眠っているエレンを目を見開いてみているグンタやオルオ、そしてどこか釈然としないといった顔しているエルドを不安にさせることもないだろうと思ったから
「そうか。
エレンはこのまま連れ帰ってかまわない。
それと明日の11時に本部まで来るようにリヴァイに伝えてくれ。」
と笑いかけた。
エルヴィンが笑ったからかエルドもホッとしたような顔をしてはいと返事をする。
それに頷いて医務室を出た途端、エルヴィンの顔から笑みが消えた。