進撃の巨人

□一緒に…
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目の前いる女はユニコーンのエンブレムの付いた軍服を着ている。
ユニコーン…憲兵団に所属する人間だ。

興味も何もない女に呼び止められ、素敵だとか何とか言われてもリヴァイは不愉快だとしか思わなかった。

そもそもこの女はなにもかもがペトラとは違う。
化粧なんかしなくても肌が綺麗で唇も髪も艶々してて、香水なんてつけていないのに何となくいい香りがしているペトラとは違い、あつい化粧で素肌が見えず、テラテラしてる唇と毛先のパサついている髪に、きつい香水の匂い。

ペトラの顔が見たい、こんな女の顔じゃなく…とリヴァイは思ってしまった。

しかしリヴァイのそんな気持ちも知らず、女は一人でべらべらとしゃべっている。

その話を全然聞いていないリヴァイだったが、その女が『ペトラ』の名前を出した事で、リヴァイは眉間に皺を寄せ、思い出した。
この女はペトラの同期で卒業成績10位で憲兵団に入った女だ、と。


ペトラの昔からの知り合いとはいえ、年がペトラより上のオルオはペトラより先に調査兵団に入っていた。
初陣こそ散々だったが、オルオはみるみるうちに頭角を現し、リヴァイもその存在を認めていた。

そのオルオが
「今期の訓練兵の主席が俺の知り合いで…そいつが恐怖に怯える事のないように俺は調査兵団に入ったのに。
あいつ、主席のくせに憲兵団じゃなくて調査兵団に入りたいなんて言ってて反対しても聞きやしねぇ。」
と愚痴っていたのを聞いたリヴァイはその時の新兵勧誘式に出席した。

恐怖に怯えることのないように調査兵団に入ったというのだから、きっとオルオはそいつを好きなんだろうとリヴァイは漠然と思った。

その女に興味があった。
そして新兵勧誘式で、調査兵団に入団した主席の華奢な女…ペトラ・ラルに、リヴァイはこれがオルオの知り合いかと驚いた。
思っていた以上に可愛らしい子だったからだ。
だけどこんなんで巨人と戦えるのかとも思った。

そんなことを考えながら新兵勧誘式を終えて帰ろうとしてるリヴァイに気が付かずに
「首席で卒業したくせに調査兵団希望なんて、ほんとに鼻に付く女。
ちょっと可愛いからっていい気になって、でも調査兵団は最初の任務で5割が帰って来れないって言うもの。
そうなれば溜飲も下がるわ。」
と言っている女がいて、思わず剣を抜きそうになった。
その時の女だ。


「黙れ。
お前にもしペトラの10分の1の優しさがあったとしても願い下げだというのに、それすらもない女と顔を合わせるのも不愉快だ。
黙らねぇと今ここで切り捨てる。」

その時の怒りを思い出し、リヴァイは女をにらみつけた。
それでも食い下がろうとする女にリヴァイは
「そもそも俺は巨人を絶滅させると死んでいった部下達に約束している。
それまでは他の事など考える気はない。」
と告げた。

そう言われるとそれ以上は何もいえなかったのだろう。
女は悔しそうに唇を噛み締めた。

(どうせお前が気に入ったのは俺の兵長と言う肩書きだけだろうが。
だがペトラは違う。)
リヴァイは女を一瞥してリヴァイ班が拠点にしている古城に帰ることにした。

あとでエルヴィンに文句を言ってやりたいくらいだ。
くだらない事でお前が俺を呼びつけるから、変な女に絡まれたと。

早く戻って、ペトラの入れてくれたお茶を飲みたい。
そんな事を考えながら、リヴァイは厩舎で自分の馬を受け取り、古城に戻った。


「おかえりなさい、兵長!」
庭で馬の手入れをしていたエルドとオルオが声をかけてくる。

「グンタとエレンとペトラはどうした?」
「グンタはエレンと立体機動の練習に森に行ってます。
ペトラは夕飯の買出しに行きました。」

「そうか…」
それだったら、どこかですれ違っていてもおかしくはなかったのに。
仕方ない。

「ペトラが戻ったらお茶を俺の部屋に持ってくるように伝えてくれ。」
リヴァイは二人に伝えて自分の部屋に戻る。

ペトラがリヴァイの部屋にお茶を持ってきたのはその15分後だった。
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