進撃の巨人
□手紙
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リヴァイはハンジが差し出しているものを見て
「なんだこれは?」
と聞いていた。
ハンジが差し出している封筒には見慣れたペトラの字で『遺書』と書いてある。
「ペトラの部屋を片付けたら出てきたんだよ!
リヴァイは知らないかもしれないけど、調査兵団の中には壁外調査のたびに遺書を書いておく兵士がいるんだよ。
もう戻ってこないつもりか縁起が悪いなんていう人もいるけどね、死ぬかもしれない任務を前に大切な人に普段言えない言葉を残したい人もいるんだ。
ペトラは後者だったんだね。」
ハンジの目元は赤くて、泣いていたのだろうとリヴァイは思ったが、テンションはいつものままで顔には笑みを浮かべていた。
「だったら父親に渡してやれ。」
リヴァイは封筒を受け取らないで歩き始める。
壁外調査から戻ってきた時の、ペトラの父の言葉が、表情が。
そしてペトラの死を知った時の彼の慟哭が、リヴァイの頭から離れない。
だけど、それらを振り切ってリヴァイは前に進んできた。
今回だってそうしなければならないのだ。
たとえ失ったのが恋人でも。
「渡したよ。
その上でペトラの父親からリヴァイ兵士長殿に渡してほしいって返ってきたんだよ。
どういう意味か分かるだろ?」
ハンジの声にリヴァイは足を止めた。
その間にハンジはリヴァイの前まで歩いてきて、封筒をリヴァイの手に押し付けた。
「なんていったらいいか分からないけど…ペトラの残した気持ちはリヴァイが受け取るべきだよ。
それがリヴァイの大きな力になるはずだ。」
遠ざかっていくハンジの背中と手の中の封筒を、リヴァイは交互に見ていた。