銀魂

□花魁道中・玖
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「まだ、真選組の密偵ははりついてやがるのか?」
高杉は帳簿を見ながら部下に聞く。

「わかりません、申し訳ありません。
ですが、簡単に諦めることはないと思います。
密偵が鬼兵屋についているのは、副長からの命であるという噂です。
その副長がこんな命を出したのは、高杉様が柳生九兵衛を身請けするのを阻止したいからでしょう。
そう簡単に諦めると思えません。」

部下の報告を聞いて高杉はため息をつく。

「めんどくせぇ野郎だなァ。
許されるもんなら殺っちまいてェな。
このままじゃ取引ができねェじゃねェか。」

「相手は真選組副長ですよ!
そんな簡単にいきませんよ!」
驚く部下に分かってる、と言って下がるように高杉は促した。

誰もいなくなった部屋で高杉は九兵衛のことを思う。
年季明けの引き取りとはいえ、九兵衛が自分の元に来るのは決まったことだ。
だからその時に何不自由ない暮らしをさせられるよう、九兵衛の希望は何でも叶えられるように、今よりももっと経済的なゆとりを持ちたい。

それに年季明けの引き取りが決まっているというのに、河上万斎や坂本辰馬が新造出しや突き出しの費用を出したり、総仕舞いをしたりするのがしゃくに障って仕方ない。
九兵衛は自分のものになることが決まっているというのに。
今日など、紋日だというのに河上万斎は総仕舞いをしている。
九兵衛がいずれ自分のものになると思っていても、独占欲の強い高杉には面白くないことこの上ない。

なのに、真選組の密偵がついていて、商売も進められない。
それでも、九兵衛は自分のものだ。
他の奴らに渡してたまるか、こんなに誰かを愛することは、この先きっと二度とないと思うから。

遠くで祭り囃子が聞こえる。
この祭り囃子を、九兵衛は河上万斎と聞いているんだろうか。
そう思うと、ひどく腹が立つ。
「九兵衛、必ずお前を俺のだけものにしてみせる。」
高杉はそう呟いて煙管を口に運んだ。

END
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