黒子のバスケ
□青の姫君
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さつきは体育館を開けると、部室から持ってきたタオルを並べる。
次はスポーツドリンク作りだ。
スポーツドリンクは保健室の水道で作る。
校内で唯一浄水器のついてる水道があるのが保健室だからだ。
そこに向かう途中でさつきが会ったのが桜井良。
桜井はいつも、スポーツドリンク作りを手伝ってくれる。
実際にはさつきが暴走して変なドリンクを作らないようにのお目付け役ということなのだけれど、桜井はこの時間を密かに楽しみにしている。
誰にも邪魔されずにさつきと話ができるわずかな時間だし。
「おはよう、桜井くん!」
「おはようございます、桃井さん。」
桜井に気が付いたさつきが挨拶をしてくれる。
手には空のドリンクケースの入ったかごを抱えている。
桜井は慌ててさつきに近寄り、それを持ってあげる。
「いいよ、桜井くんはこれから練習があるんだから。」
とさつきは桜井からかごを奪い返そうとするが、桜井はそれをよしとしない。
「大丈夫ですよ、ボクも男ですから!」
とかごを抱えて保健室に入っていく。
「ありがとう、桜井くん。」
微笑むさつきにかごを机の上に置いた桜井はハーフパンツのポケットから取り出した小さな紙袋をさつきに差し出した。
「あの、いつもいつも早くに登校して色々準備とかしてくれてありがとうございます、桃井さん。
感謝してるんです。
これ、その気持ちです。
あの、マンガを買いに行ったついでに見つけたんです、これしかなくって気に入るかどうか分からないんですけど…。」
桜井は俯いている。
思わず買ってはしまったものの、受け取ってもらえるかどうか今になって心配になってきたからだ。
だから、紙袋が自分の手からなくなり
「ありがとう、桜井くん。
開けてみていい?」
と声をかけられた時は嬉しくなって満面の笑みで
「はい!」
と答えた。
「わぁ、可愛いね!」
紙袋を開けたさつきは桜井に微笑みかけた。
「気に入ってもらえましたか?」
「うん、ありがとう!」
紙袋の中に入っていたのはいちごの形をしたパッケージのグロスだった。
「桃井さんはさくらんぼが好きらしいと聞いていたので、それならいちごも好きかなぁって…」
「うん、好きだよ。
ありがとう。」
さつきはグロスを顔の横に掲げ、嬉しそうに微笑む。
「ならよかった…!」
桜井もその笑みにホッとしてそして笑った。
あなたが笑ってくれるのなら、ボクはそれだけで幸せです。