黒子のバスケ

□The bullet of love
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帝光という組織は、ここ数年で急激に力をつけて大きくなった組織で、当然警察にもマークされている。

とはいえ、警察が握っている情報は帝光にはリーダーが一人とそのリーダーの側近であり幹部でもある5人の人間がおり、うち一人は女であるくらいのもので、帝光という組織の実態は警察もよくつかめていない。
それは六人全員が自分の側近にしか顔を素顔を見せないからで、同時に情報を漏らした人間は徹底的に排除してきたからでもある。
だから青峰という刑事はさつきを帝光の幹部なんだと思っていないのだろう。

さつきを心配し、家まで送ると言い張り、しかたなくさつきは自分の家まで送ってもらうことにした。
自分達は帝光の本部で暮らしているが、それ以外にそれぞれが何かあった時のためにマンションをいくつか所有している。
さつきは私的に所有しているマンションで一番警察署から近いところを選び、送ってもらうことにした。

それを失敗だと思ったのは、青峰大輝が
「なんだ、アンタ、オレのご近所なんだな。
オレの家もここだ。
オレは19階だからアンタの部屋の一つ下だな」
と言ったから。

「送ってくださってありがとうございました。」
頭を下げたさつきに青峰は
「所で名前と連絡先教えろ。
後日、事情を聞くことになっと思うから。」
と自分の携帯を取り出した。
さつきは仕方なくプライベート用のスマホを取り出し、青峰と連絡先を交換した。

「そんじゃ、無事でよかったな。
なぁ、アンタ…」
「ねぇ、刑事さん、さっきからアンタアンタって失礼じゃない?
私には桃井さつきって名前があるんだけど?」

アンタを連発する刑事につい頭にきて文句を言ってからしまったと思う。
刑事に本名を名乗ってしまった…!

内心焦るさつきに青峰は笑いかけた。
「桃井さつきか、いい名前じゃねーか。
可愛いし。」
その笑顔になんだか焦るのも馬鹿らしくなり、そしてつられてさつきも笑っていた。

「ありがと。」
なんかこの人といると調子狂うな、そう思いつつもさつきは青峰に礼を言い、青峰もそれに
「どういたしまして」
と笑って帰っていった。


ドアを閉めたとたん、さつきの顔から笑顔が消える。
中に入り、コードレスホンを手に本部の赤司直通の番号に電話をした。

コール一回ですぐに赤司は電話にでた。
「さつき?!
何があった、無事なのかっ?!
今どこだ、すぐに迎えに行く、全員で!!」

あの赤司が珍しく取り乱し、叫ぶのをさつきは慌てて落ち着かせる。
「ごめんね、本当にごめんね、大丈夫。
今、自分のマンションにいるの、そう、そっちの方の。
うん、たまたま通りかかった刑事が助けてくれて…うん、大丈夫。
素性はばれてないし、後日事情は聞きたいとか言われたけどごまかす自信はあるから。
相手は警察に捕まったけど、私の事は話さないでしょ。
そもそもあの人には、私ホテルで自分のことコールガールだって説明したし、コールガールのことなんか警察に話せないでしょ、大丈夫よ。
え、うん、ごめんね。
けど、オフの日くらい一人で出かけたいの。
…………はい、すみませんでした。
みんなで来なくても大丈夫だって!
うん、これからはオフの日でも『桐皇』にちゃんと身辺警護してもらうから。
はい、はい、うん、少しここでゆっくりして、うん、夜中にそっちに戻るから。
え?
はい、了解。」

赤司が落ち着いた後で必要な事だけを報告し、赤司のお説教を聞いて、さつきは電話を切った。

赤司たち5人がすぐに迎えに来るというのを断ったら、赤司がすぐに『桐皇』をマンションによこすと言っていた。

『桐皇』とはさつきの側近とSPを兼ねた集団の事だ。
リーダーは原澤克徳といい、その下に今吉翔一、若松孝輔、桜井良の4人がいる。
少数精鋭のさつきが赤司たちと同等くらいに信用している4人だ。
4人には常にさつきのそばにいさせて欲しいといわれているが、オフの日位は自由にしてよとさつきはそれに頷かなかった。
そのせいでこんな事が起こったのだから、もうそれは通用しないだろう、そう思うと残念で、さつきはうまくこの件を処理できなかった自分を恨んだ。
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