黒子のバスケ

泡沫
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『真太郎はかっこいいからすぐに恋人ができるわよ。』

姉はそう言ったが、姉以上の女がいる訳ない。

オレには恋人はできなかったのに、中村と別れて半年後、姉にはまた恋人ができた。
今吉という姉の勤める会社の会計士だった。

今吉翔一とは何度かオレも姉とともに食事をしたが、胡散臭く、腹黒そうで油断ならない男だと思った。

姉に今吉のどこがいいのか、聞いたことがある。
姉は
「メガネが似合うでしょう?」
と笑い、
「真太郎もそろそろメガネを新調しなさい。」
と小遣いをくれた。

小遣いなんかいらない、メガネならオレの方が似合う。
言いたかったけど、言えなかった。


今吉はやはり腹黒い男だった。
何度か姉と共に一緒に食事をした後、今まで家まで送ってくれた今吉は突然
「今日はこの上に部屋とってあるんや。
ワシは君の姉さんと泊まるから、君は一人で家に帰り。」
とオレにタクシーチケットが入ってるらしい封筒を渡してきた。

「泊まらないよ、真太郎はまだ高校生よ、一人にできるわけないでしょう?」
と断った姉に
「さつきが早う弟離れせんとあかんと思うから、言うとるんや。」
今吉は難しい顔をした。

「それにしたって、高校生を一人にしておけるわけないでしょう?」
と姉は言ってその日はオレと一緒に帰った。

そのときの今吉の顔を見て、オレは今吉がオレの姉に対する気持ちを知っていてこんなことを言ったんだと分かった。

だから帰る時、オレはわざと寂しそうな顔をして
「オレは姉さんの負担にしかならないのだろうか?
本当は今吉と泊まりたかったんじゃないのか?」
と言ってみた。
姉がオレに寂しそうな顔をさせるくらいなら今吉と別れるだろうことを分かっていた上で。

姉は『弟』を捨てることは絶対にできないと知った上で。


色々もめたようだが、姉は結局今吉と別れた。

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