黒子のバスケ

□坊ちゃまの言う通り!U
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「すみません、ありがとうございました。」
頭を下げるさつきに赤司は
「大輝の婚約者は僕にとっても幼馴染みたいなものだ。
気にしないでいい。
そして、確かに着替えはした方がいい。
風邪を引く前に。」
と微笑む。

「お前、ホント鈍くさいな。」
青峰が二人の間に割り込んでいく。

「だって、本当にいきなりぶつかってきたから避ける暇なくて…」
ナンパするためにわざとぶつかったと思わねぇから鈍くさいんだよ、青峰はその言葉を飲み込む。

「とりあえず、寒いだろうからこれを羽織るといいのだよ。」
緑間が薄手のストールを出して広げるとさつきの肩にかけた。

「何でストールなんか持ってるんですか、緑間君?」
若草色のストールをまじまじと黒子が見ている。

「おは朝占いのラッキーアイテムじゃないですか?
今日の蟹座のラッキーアイテム、ストールでしたものね。
緑間さんは蟹座なんですね。
ありがとうございます、お借りします。」

緑間が答えるより先にさつきが答えた。

「なんで知っているのだよ?!」
驚く緑間にさつきは笑いかけた。
「女のカンです。」

「すっげぇ!
さっちん、すごい!」
「そうですね、よくそれだけでおは朝の占いだって分かりましたね。」
紫原と黒子が感心する。

「いえ、私もおは朝を見てるだけです。
おは朝はスポンサーのCMも興味あるので。
今朝のおは朝のCMで見た紫原製菓さんの新しいチョコレートと、黒子製薬さんの美肌ドリンク、KISE化粧品の新色のリップグロス明日買いに行こうと思ってたんです。
イチゴ味のメレンゲをホイップチョコでコーティングしてるなんてすごくおいしそうだし、最近は肌荒れが気になるんですが、あのドリンク、ヨクイニンも入っていてすごく良さそうだし、新色のリップグロスはラメとカラーが綺麗だから唇に視線が集まって肌荒れがごまかせそうだなって思って。」
自社の事をほめられれば悪い気はしないだろう、紫原も黒子も黄瀬も笑顔で
「買わなくても明日にでも家に届けるから」
なんて言っている。

緑間は周囲が引くくらいのおは朝占い信者だが、さつきがストールをラッキーアイテムだと知っていたことがよほど嬉しいのか柔らかい表情をしている。

「大輝、さつきは素晴らしい女性だな。」
さつきと他のメンバーのやり取りを不機嫌そうに見ていた青峰に赤司が声をかけてくる。
「あん?!」
文句を言おうと思った青峰だが、赤司はそれより先に青峰から離れ、さつきの元に行くと
「すぐに部屋と着替えを用意するから。」
と告げる。

「大丈夫です。
主催者は赤司家なんですから、赤司さんもお忙しいでしょう?」
微笑みながらもささっと赤司のタキシードのポケットのチーフを直すさつき。

「おい…」
お前、誰にでも気安くさわんな、青峰が怒ろうとしたがそれより先に赤司が
「だからだよ。
だから、来賓の方には最大限のおもてなしをしなければならない。」
さつきの手を取った。

「大ちゃん…」
さつきは戸惑ったような顔で青峰を見る。

「まぁなんか服くらいは借りた方がいいんじゃねぇの?」
青峰は仕方なくそう言った。
濡れたままでさつきが風邪をひいたら元も子もない。
仕方なく、青峰はさつきの手を引いたまま歩いていく赤司の後をついていく。

しかしその後から緑間と黒子と黄瀬と紫原も付いてくる。
「おい、何でお前らもついてくんだよ?!」

「パーティより桃っちの方が大事っス!」
「桃っちってなんだよ、お前ら知り合いじゃねぇだろ?!」
「うん、でもさっちんのことは小さい頃から知ってるしー。」
「そうですね、青峰君が桃井さんと僕たちを一緒に遊ばせてくれなかっただけで、僕たちは桃井さんを知っていました。」
「ああ、そうだな。
桃井もオレ達を知っていただろうしな。」
「っつか、桃っちマジいい子っス。」
「そうですね、さりげない気遣いができるし、美人ですし…。」
「自社製品のモデルやってるオレにサインねだらなかった唯一の女の子っス!」
そりゃさつきは黄瀬に興味ねぇんだよ!
青峰は心の中で叫ぶ。

「それにおは朝をチェックし、ラッキーアイテムを覚えてるとは、気が合いそうなのだよ。」
「だよねー、オレも新製品のお菓子好きー。
さっちんがおいしそうって言ってくれてすごくうれしー。」
「あのドリンクはうちの自信作らしいので…興味を持ってくれて僕も嬉しいです。」

嬉しそうに話す黄瀬と紫原と黒子と緑間を見ながら、青峰はため息をついた。

だからお前らとさつきを会わせたくなかったんだよ。
オレら、好みが似てるからな。
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