黒子のバスケ

愛妻家達の幸福な日々
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ACT.緑間2

「ミドチン、おはよー。
みんなもう学校行ったよー。
黄瀬ちんがラッキーアイテムがどうとか言ってたけど、賭けはどうだったのー?」
リビングに入ると、そこには朝からお菓子を食べている紫原がいた。

「オレの負けなのだよ。
だが、負けたのにこんなに清々しい気持ちになるのは初めてなのだよ。」

「そうなんだー。
まぁさっちんとずっと一緒にいられたらそう思うよねー。
オレも早くさっちんと一緒に過ごしたい。」
紫原が新しいスナック菓子に手を伸ばしながら片手でリビングのテーブルを指差した。

「そういえば、ミドチンの携帯鳴ってた。」
「そうか。」
「昨日は黄瀬ちんの先輩からも電話あったらしいよ。
峰ちんの先輩からもまた電話あったらしいし。」

緑間は紫原にそうかと言いながら携帯を手に取った。
着信履歴は『高尾』となっている。
緑間はため息をつくと発信ボタンを押した。

「おー、真ちゃん。
はよー。」
すぐに出た高尾は朝から高いテンションで緑間に挨拶する。

「朝からうるさいのだよ、高尾。
携帯に何度か連絡をくれていたようだが、何の用だ。」
「なんか用事あってでなかったの?」
高いテンションのまま聞いてくる高尾に
「いや。
自室に携帯を持っていくのを忘れただけだ。」
と緑間は答える。

「ああ、真ちゃん今、やつらと一緒に住んでんだもんね。
今度遊び行っていい?
いいよね、OKっしょ!」
高いテンションをキープして話を進める高尾に緑間はため息をついて
「オレだけの家じゃないから分からないのだよ。
まぁ家に招いていいか、やつらに聞くだけ聞くが。
用件はそれだけか、なら切るぞ。」
電話を切ろうとした。

「待って、本題終わってないから。
桃井ちゃん、月曜日の夜から家に帰ってないらしいよ。
家に連絡もないって。
真ちゃん、桃井ちゃんの行きそうなとこ心当たりないの?」
高尾は電話を切られないように早口で言う。

「ああ、青峰たちからその話は聞いた。
だが幼馴染の青峰に心当たりがないのに、オレにあるわけがないだろう。
それにオレよりむしろ、お前の方が桃井と連絡取っていたんじゃないのか?」
高尾はその社交性の高さからさつきともすぐに仲良くなった。
その姿にひっそりと嫉妬の炎を燃やしていた事なんて、高尾にはいう気もないけれど。

「まぁ確かにそうだけどさ、でもオレと真ちゃんに同時に何かあったら、桃井ちゃん絶対に真ちゃんを優先してオレを見捨てるよ?」
高尾の言葉に緑間は当たり前だろうと思いつつ
「そうなのか?」
と聞いていた。

「そうだよ。
だから真ちゃんなら知ってるかなって思ったんだけどね。
知らないなら仕方ないよなー。
それじゃ今度、遊びにいかせてね。」
高尾はそれだけ言って電話を切る。

「高尾が今度、ここに遊びに来たいと言っているのだよ。」
切れた携帯をテーブルに置き、紫原を振り返る。

「室ちんも来たいって言ってたし。
赤ちんの高校の人も来たがってるらしいよ。
断り続けるのも怪しまれるから、なにか考えないとって赤ちんが言ってたー。」
紫原が眠そうな目で緑間を見る。

「そうか、確かにそうだな。」
「うん、だってやっとさっちんがオレたちの奥さんになってくれたんだもんねー。
本当は誰にも来て欲しくないけど、何かあるから家に招待してくれないんじゃないかって思われたらいやだもんね。」
「ああ。」
紫原と緑間は笑いあった。
せっかく手に入れた幸せだ。
もう二度と、離す気はない。



「おかしいっスね、確かに。
桃井ちゃんがいなくなったんスよ、普段なら血眼になって桃井ちゃん探し回ってるはずっすよ、真ちゃんなら。
それをしないって事は、桃井ちゃんがどこにいるか分かってるってことだと思うっス。」

高尾は切れた携帯を放り投げ、目の前にいる今吉と諏佐と若松、笠松と森山と小堀に告げた。
大学進学を機に一人暮らしを始めた今吉翔一のワンルームマンションには現在、長身の男たちが集まっている

桃井が買い物に行ったきり帰ってこない、泣きながら桜井が電話をかけてきた時、今吉は真っ先に青峰の顔を思い浮かべ、今吉から連絡を受けた笠松と高尾はそれぞれに黄瀬と緑間の顔を思い浮かべた。
本人たちは隠していたかもしれないが、瞬時にそう思うくらい、キセキの世代と呼ばれた六人のさつきに対する執着は強かった。

「火神にも連絡したし、京都のレオ姉さんと、氷室さんにも連絡はしてあるでっす。
みんな、オレと同じこと言ってたし。」
高尾が六人を見渡した。

「ああ、そうだな。
桜井が泣きながら大学も行かないで桃井を探し回ってるのに、青峰が平然としてるなんて変だ。」
諏佐の言葉に若松が
「でもそうだとして、どうやって桃井助けるんスか?!」
と叫ぶ。
「桃井を助けたりたいのはここにおるやつみんな同じや。
せやから考えるんや。」
今吉が若松を落ち着かせる。

「黄瀬、しばき足りなかったんだな。
もう少しきっちりしばいておくべきだった。
こんなとんでもないことをしでかさないように…。」
「笠松のせいじゃない。
黄瀬がここまでするとは思わなかった。」
「桃っちちゃん、オレが絶対に助け出す!」
笠松と小堀と森山を見て高尾が言う。

「とりあえず、怪しいのは家っしょ?
あの赤司がわざわざ買ったシェアハウスっスよ、絶対にあの家、何かあるっしょ。」

「そうやろな。
あいつらが桃井に危害を加えることはないやろけど…早く助けてやらへんとかわいそうや。」
今吉の言葉に、その場にいた全員が頷いた。

…けど、助けたところで桃井と桜井は幸せになれるんやろうか…
桃井が本当の意味で無事やいうことはまずないで

今吉は心の中でだけ呟いた。

ACT.緑間 END

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