銀魂

□見廻組一日局長
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7月7日。

見廻組屯所前にはヤジウマに混ざってソウゴ13に扮した、真選組一番隊隊長・沖田総悟がいた。
が、誰もソウゴ13には気が付いていない。

屯所から佐々木異三郎と今井信女に挟まれた九兵衛が出てきたからだ。
今井信女だってかなりルックスはいいはずだ。
だけど、男として育てられたはずの九兵衛は、その隣に居ても全然見劣りしなかった。

報道陣が一斉に三人に…というか、九兵衛に群がる。

「お似合いですね!」
テレビでよく見るレポーターが九兵衛にそう言った。
「どうもありがとうございます。」
九兵衛は笑顔で言った。

九兵衛は名家の跡取りだけあって、普段は表情豊かな方ではないけれど、必要な時には愛想よく振舞うことも出来る。

スカートの丈は今井信女のホットパンツと同じくらいの短さだけど、真選組一日局長の時に着ているからか、もう恥ずかしそうな様子もなかった。

「見廻組は本来は警邏はパトカーで行いますが、今回は徒歩で警邏を行います。
見廻組はエリートではありますが、あまりに見学者が多いと何かあっても皆さんの安全は保証できませんよ。
一日局長は確かに美しいですが、柳生家令嬢で剣の腕も一流のエリートです。
そして見廻組の仕事は危険を伴うものです。
ご理解のうえ、それでもいいと思う方だけ付いてきて下さい。」
局長の佐々木異三郎の言葉にも帰るようなヤジウマはいなく、そのためソウゴ13も目立つことなくヤジウマの中に紛れ込めた。

見廻組は九兵衛を異三郎と信女が挟み、三人が先頭でその後ろを隊長クラスが歩いていく。

信女はベルトで裾の長い隊服を止めているが、九兵衛はベルトはしていない。
風が吹くたびに隊服が翻って、白いミニスカートからすんなり伸びた細い太ももが惜しげもなく見える。
それにヤジウマはもちろん、報道陣の男共や見廻組の隊士まで釘付けになってるのが分かって総悟はイライラした。

今井信女より足の露出が高い上にスカートだ。
下にスパッツかなんかはいてるんだろうな、総悟はそう思ったが、そんなアドバイスをしてやる親切な人は九兵衛の周りにいなそうだ。
自分が教えておけばよかった…。
総悟は今更ながら後悔した。

九兵衛は綺麗だ。
小柄だけど背筋を伸ばして隊服のすそをはためかせて歩く姿はもう神々しいとしか言いようがない綺麗さ。

だけど、ミニスカートとかで露出してるからそのあたりは生身の女で、肌だって柔らかそうだし、っていうか実際に柔らかくてあたたかくて敏感だし…。
だけど、そんな姿は自分にだけ、見せて欲しかった。
総悟はため息をつく。

「おい、兄ちゃん。
あんな綺麗な女見てんのにため息付いてるなんてどうしたよ?」
総悟の隣にいた男が声をかけてきた。

「いや、九たん、高嶺の花だからね。
どうしたって自分のものになんないし、ため息付きたくなるよね!」
総悟の後ろにいた男が口出ししてくる。

「九たん?!」
総悟は思わず聞き返してしまった。

「九たんは芸能人なんかより可愛いのに普通に会えるし、親しみやすいよね!
俺、九たんに会いたくて毎日、柳生家の周りをうろうろしてるよ!」

「でも、九……たん、恋人いるじゃねーか。
真選組の隊長の…」
口を出してきた男の言葉にイライラした総悟はそれでもそれを抑え、そう言った。

「ああ、あのガキね…。
すぐに破局するだろ、だってあのガキ、サド王子だし。
面はすげぇいいが、性格がなぁ…。
それに九たんはセレブ、あっちは田舎侍だ。
九たんの気持ちもすぐにさめるさ。」
最初に声をかけてきた男の言葉に、サドだから打たれ弱い総悟のガラスのハートはひびが入りまくる。

「すぐに九ちゃんはさめちまいますかねェ…」

「さめるよ、大丈夫、そしたら俺たちにもチャンスがあるって!」

口出ししてきた男の言葉にさらに総悟の気持ちが沈んだ時、歓声が上がった。

総悟が九兵衛の方を見ると、見廻組警邏隊の行く手に、一人の男が立っている。
男は刀に手をかけているので、異三郎と信女も構えたが、それを九兵衛が制した。
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