ONE PIECE倉庫

□キスだけじゃイヤ
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けど……やっぱり抱けない。

ゾロはビビを離した。

「ブシドー…」

「抱けるわけねーだろ。
無理に決まってんだろ。
だってお前、アラバスタの王女様じゃねぇか。
お前アラバスタに平和が戻ったら、俺とは別れるんだろ?
この船を降りるんだろ?
だけど俺はこの船を降りねぇ。
世界一の剣豪になって、ルフィが海賊王になるのを見届ける、それが俺の夢だから。
その間にお前は、王家のために他の男と結婚するんだろ?
そもそも、海賊が一国の王女と結婚なんかできるわけねぇ。
その海賊が、王女様を抱けるわけがねぇだろ?
お前はきっと、政略結婚とかでどっかの国のそれなりの男と結婚するんだろ?
その初夜に処女じゃねぇって旦那に知られたらまずいだろ。
俺はお前を本当に愛してるけど、俺たちは一緒にはいられねぇ。
だから、俺はお前を抱かねぇ。
お前のこれから先のために。」

ゾロはため息をつく。
ビビを好きになって、ビビも自分を好きだと分かって、恋人関係になったときからずっと自分で自分に誓っていたことだ。

『いずれ別れなければいけない。
いずれビビは王家を継ぐために結婚しなければいけない。
だから、ビビを抱くことはしない。』


「ブシドー、アラバスタ王家の人間はね、一生に一人としか関係してはいけないの。
一生一緒にいたい、そう思った人を初めての人にして、そして一生涯その人としか関係を持ってはいけないの。
だから、私はあなたに抱かれたいの。
だって、私が一生一緒にいたい、そう思うのはこれから先もずっと、あなただけだから。
あなたの言う通り、私はアラバスタに残ってこの船を降りるわ。
それにアラバスタを存続させるために子供を産まなければならない。
王女が海賊と結婚なんてそれも無理ね。
だけど、私はあなたが好きなの。
だから結婚はしないわ、これから先もずっと。
あなたを愛しているから他の人となんか結婚できないわ。
しないんじゃないの、できないの。
でもそれでは王家は滅んでしまうことも分かってるわ。
だからあなたに抱いてほしいの。
産むんならあなたの子を産みたいの。
結婚なんかしないで、あなたの子を産んで、一人で立派に育てて、王家を継げるような子にする。
未婚の母が王女でも、いいでしょ?」

そんなゾロにビビが言った。

驚いて声もでないゾロにビビは微笑む。

「いいでしょ、そんな王女がいたって。
海賊を一生愛し続けると誓って、未婚のままその海賊の子を産む王女がいたっていいでしょ?
だって世界は広いって私はこの船に乗って知ったわ。
だから、そんな王女がいたっていいと思うの。」

ゾロを見つめて微笑むビビの目から、涙が零れ落ちる。

「もう私、いいの。
あなたに愛されて、あなたを愛して、充分幸せだったから、これ以上の幸せなんかもうないって思うから、だから結婚なんかできなくても、これから先あなたに一生会えなくても、その思い出だけで一生、生きていけると思うの。
そこまで覚悟してるの。
だから、私を抱いてください。」

「俺も愛してる。
もう二度と会えないとしても、お前を一生愛し続ける。
だから、お前を抱いてもいいか?」

ゾロの言葉にビビはゾロに抱きついた。

「うん。
愛してる、ゾロ。」

自分の名前がこんなに耳に心地よく響くなんて知らなかった。

自分がこんなに誰かを愛することができるなんて知らなかった。

アラバスタに平和が戻ったら別れる事になってしまうけど、それでもこれから先も一生、この気持ちは変わらない。

言葉では伝えきれない深い深い愛情を込めて、ゾロはビビに口付けた。
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