銀魂

□通学恋愛
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それでも三人であちこちを回り、時間は十二時を過ぎた頃になった。
「腹へったな〜。
総悟の知り合いだっていうあの子、九ちゃんがいる店でなんか食おうぜ。
浴衣喫茶だろ、食いもんとかなんかあるんじゃないか?」
という近藤の言葉で、三人は九兵衛のクラスに行くことにした。

入り口にはピンクの浴衣姿の女の子がいた。
「いらっしゃいませー。
ただいま満席で少々お待ちいただきますけど、いいですか?」
にっこりと微笑まれ、満席なら仕方ないし、三人は頷いて入り口で席が空くのを待つことにした。

自分たちの後ろにも人が並ぶ。
繁盛してるらしい。
「満席だし、なのに次々人が来るし、人気なんだなぁ。」
近藤の言葉に総悟が頷いた時、後ろにいた男三人組が
「眼帯つけた女の子がめちゃくちゃ可愛かった。
あの子いるかな〜。」
と言ってるのが聞こえてきた。
「プラカード持って歩いてた子だろ?
可愛かったよな〜。
なんか品があって、お嬢様って感じだった。
あれ見てここ来ることにしたんだもんなぁ。」
他の男もそう言ってる。
眼帯つけた子って九ちゃんじゃねぇか!
総悟が驚いてその男達を睨みつけようとした時、受付にいた女の子が
「九ちゃんお帰り〜!
お店込んでるからフロアお願い〜!」
と言ったので、総悟はそっちの方向を見た。

『1年3組浴衣喫茶』と書いたプラカードを持った九兵衛が戻ってきた所だった。
「本当に、すごい並んで…総悟くん?」
言いかけた九兵衛が総悟に気がついて声をかけてくれた。
眼帯の子が可愛いといってた三人組の男が、その可愛い子が総悟に声をかけたのを見て驚いた顔をしている。

「来てくれたの?」
「腹が減ったからな。」
総悟が答えるより先に土方が答えた。
「そうなの?
焼きうどんとかピラフとか軽食もあるよ。
食べていってね、土方くん。」
九兵衛が土方に笑いかけた。
それが気に入らない。
なんだこのヤロー、いきなり話に入ってきやがって。
総悟がそう思った時、九兵衛が総悟の視界から消えた。

総悟たちの後ろに並んでいた男たちのうちの一人が九兵衛の腕を引っ張ったのだ。
「ねぇねぇ、女の子の指名とかできるの?」
「僕達さぁ、君に給仕してもらいたいんだけどなぁ。」
「うん、君、めちゃくちゃ可愛いからね。」
九兵衛が総悟たちと仲よさそうに話をしていたからか、男達がなにか勘違いしたらしい。
「指名はできません。」
受付の子が困ったような顔でそう言ったが、
「どーしてもこの子がいいんだよ〜。」
男たちはそう言って笑った。

「ちょ…指名は出来ないし、フロアに戻らなきゃならないので離してください。」
九兵衛が男の手を振り払おうとするが、がっちり掴まれてるらしい。

総悟が止めに入ろうとした時、九兵衛の腕を掴む男の手を掴んだのは土方だった。
「やめろよ、嫌がってんだろうが!」
もともと目つきが悪い土方が本気で凄んだのだ。
男たちはそれにのまれて手を離した。
「なんだよ、ちょっとふざけただけじゃん。」
それでも負け惜しみのように男の一人が言ったが
「ちょっとふざけただけでこんな風に女に絡むのかよ?!」
土方の声は低い。
男たちはぶつぶつ言いながら、去っていった。

「大丈夫か?
結構な力で掴まれてたんだな。
赤くなってる。」
確かに九兵衛の腕は赤くなってる。

「大丈夫だった、九ちゃん?」
「こういう時、女子高って嫌だよね…。
共学ならきっと絡まれることもないのにね。」
教室の中からその騒ぎを見ていた浴衣姿の女子達も出てきて心配そうにしている。
「僕は大丈夫だから、仕事に戻ろうよ。
土方くん、助けてくれてどうもありがとう。」
九兵衛は土方に頭を下げると掴まれた腕を撫でながら教室の中に入っていく。

「トシ、カッコいいじゃん!」
近藤が土方の事をひじでつつくのを総悟は忌々しい気持ちで見ていた。
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