銀魂

□お願い、つき放さないで
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そのまま松平と総悟と一緒に店に出勤したら、すでに店には銀時が来ていた。

「ええとね、坂田将軍が九ちゃんご指名なんだけど、松平様と皇帝も九ちゃんをご指名でしょ?
それとね、なんか真選組の土方さんも店に来て、九ちゃん指名してるんだけど。」
松平と沖田を席に案内した後、控え室に入った九兵衛を追って来た店長がそう言った。
「え?!
土方くんが?!」
九兵衛は驚いて塗りなおしていた口紅を落としそうになった。
「そうなんだよ。
まぁ土方さんは多少ほっといても大丈夫だと思うけど、坂田将軍はかなり機嫌がわるいんだよ〜。
ちょっと上手く松平様と皇帝に言って、すぐに坂田将軍の席に着いて。」
「わかりました。」
九兵衛はそう言うと口紅の上にグロスを重ね、立ち上がった。

なんで土方が一人でこんなところに来てるんだろう?
今日は自分が同伴だったから、心配して店にきてしまったんだろうか?
そう思いつつ、フロアにでて松平と総悟に声をかけてすぐに席につけないことを詫び、ついでに土方の席にもよって同じように詫びてから銀時の席に着く。

「おせぇよ、九兵衛。」
「すみません。」
ふくれっつらの銀時に水割りを作って渡す。
「九兵衛はなに飲む?」
「カシスオレンジ頼んでいいですか?」
「おお。
っつか、敬語やめろよ。
いつもの様子でいいからさ。
そんでなんであのおっさんとは同伴すんのに、俺とは同伴してくれないわけ?」
銀時がそういいながら九兵衛の肩を抱く。

パリーンと音がしてそっちを九兵衛が見たら、総悟がグラスを握り締めて割ったところだった。
慌てて総悟たちの席に着いてた女の子がこぼれた酒を拭いたり、総悟の手を消毒したりし始めた。

それでも銀時は九兵衛の肩をギュッと抱きしめて離さなかった。

「銀時ちょっと松平様と皇帝の席に行って来るから離し…」
「別に行かなくてもいいじゃん、他に女の子ついてるんだし。」
銀時は九兵衛の耳元で囁いて、
「もう、銀時、くすぐったい。」
九兵衛は銀時を軽く睨みながら銀時の頬に手を添えてその顔を反対方向に向かせたけど、銀時はその九兵衛の手を払ってもう一度九兵衛の耳元に囁いた。
「そんな九兵衛の顔も可愛いなぁ。」

その時、二人の目の前に誰かが立った。
「皇帝。」
「総一郎くん。」
総悟だった。

「九兵衛から離れろ。」
総悟が銀時を睨む。
「なんでそんな事、総一郎くんに言われなきゃなんないのかな?」
銀時と総悟が睨み合い、店の店長やボーイが慌てて寄ってくるが、九兵衛がにっこりと笑って
「それじゃ総悟様も松平様もこちらで一緒に飲みませんか?
そうしましょう?」
と総悟の手を取ってその指に自分の指を絡ませたので、総悟もそれ以上は何も言わなかった。

結局総悟と松平も、銀時と席を一緒にして飲み始めた。
店長やボーイや他のキャバ嬢たちも九兵衛のその機転にホッとする。
銀時と皇帝が暴れ始めたら、手がつけられないからだ。
九兵衛もそれを分かってるから二人がケンカをはじめないように必死だった。

酒がすすんで、銀時も総悟も酔っ払い始めて自分が多少席を外しても大丈夫だろう、そう思って席を立つ。
土方のテーブルに行こうとしたのだ。
だけどさっき土方がいた席には誰もいなかった。
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