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□最後の恋
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あの別れから十年が経った。
色々なことがあった。
色々な冒険があった。
色々な戦いがあった。
そして、俺はついに世界一の剣豪になった。

十年間、一度もビビに便りを出すことはなかったし、ビビからも便りが届くことはなかった。
けど、アラバスタがすごい速さで復興を遂げたことと、そして今や世界でも有数の大国になったことは新聞を見て知っている。

そのアラバスタの女王、ネフェルタリ・ビビは、その美しさと政治的な面からもあちこちから結婚の話が出ているのにそれを受けず、『アラバスタの処女王』と言われている。
俺の事を待っていてくれてるのは分かった。
だけど、俺は世界一の剣豪になるのに、十年かかってしまった。

ようやく世界一の剣豪になって、こうしてアラバスタの地を再び踏むのに十年もかかった。

首都アルバーナの王宮の前で俺は佇んでいた。
ついたはいいが、どうやって中に入ろうか?

そう悩みながら城の周りを歩き回っていたら、いきなり塀から水色の小さな頭が飛び出してきて、俺は驚く。
それはあっと今に全貌を現した。
どうやら塀の割れ目から出てきたらしい、ガキだった。

くりっとした目の、可愛らしい顔をしていたが、髪は短く切ってあるし、服装と
「やった、今日は僕の勝ちっ!」
と一人でガッツポーズしてるところからみて、男なんだろう。
王宮から出てきたって事は、関係者だよな…。
ガキをじっと見ていた俺の耳に、
「いいえ、あなたの負けよ。
今日もお母様の勝ち!」
何よりも聞きたかった声が聞こえてきた。

「うそだろー?!」
ガキが上を見上げる。
塀の上にはビビが立っていた。

「ふふふ。
お母様の方が、あなたより何倍もこの王宮の事を知ってるのよ。
どこから抜け出すかくらい、検討がつくわ。」

お母様…?!
じゃあ、このガキはビビの子?!
どういうことだ?!
俺を待ってんるじゃなかったのか!?
なのになんでガキがいるんだ!
こいつ、結婚してたのか?!
アラバスタの処女王じゃなかったのか?!

呆然とガキを見つめる俺に、ガキが気が付いた。
ガキは俺の顔を見ると、驚いたように目を見開いた。
けど、次の瞬間には顔をほころばせ、俺に向かって走ってきた。
「お父様!!」
と叫んで。
わけの分からないまま、俺は自分に抱きついてきたガキを抱きとめた。

「会いたかったです、お父様!
僕、ロアです。
ネフェルタリ・ロア。」

「ビビ…!」
答えを求めて俺は塀の上を見上げた。
逆光で表情はよく見えない。
けど、次の瞬間、ビビは塀の上から飛び降りた。

「あっぶね!!」
俺はガキを片手に抱えたまま、飛び降りたビビをキャッチする。

片手にガキ、片手にビビを抱いて俺は二人を抱きしめながら、ビビの答えを待つ。

「あなたの子よ、ブシドー。
あの時、もうこの子がお腹にいたの。
この子と一緒にあなたをずっと待ってたの。」
ビビは俺の胸に顔をうずめたまま答えた。
その声は涙声だった。

「僕、お母様から聞いてます、お父様のこと!
お父様は強い剣士だってこと。
もっと強くなるために修行をしてるけど、世界一強くなったらアラバスタに来てくれるって。
だから僕はお父様に会えるのをずっと待ってました。」
ガキが俺にギュウギュウ抱きついてくる。


いつだったか、思った。

『俺はビビの最初の男になれたけど、最後の男にはなれない。
俺はビビを最後の女にしたいのに、おそらくその願いは叶うことはないだろう。』

けど、そんな事はなかったんだな。

あの別れの時、ビビが言った
『あなたは私の初恋よ。
そして、最後の恋の相手よ。』
という言葉は、本当だった。

俺はビビの最初の男で、そして最後の男だ。
ビビは俺の最後の女だ。

十年間、俺との間に出来た子供を育てながら俺を待っていてくれた最愛のビビと。
存在すら知らなかったのに、愛しくて愛しくてたまらない息子を俺はきつく抱きしめた。

END
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