ONE PIECE倉庫

□最後の恋
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「ブシドー。
私、あなたがいつか世界一の剣豪になる日が来ることを、心の底から願ってるわ。」
ルフィが目を覚まし、夜のうちに王宮を抜け出す前に、ビビは俺に会いにきた。
『一緒にこねぇのか?』
そう聞きたいのに聞けない。


俺はルフィが寝てる間に見た光景を思い出す。
王宮の中をトレーニングのために走っている時だった。
「リーダー!」
ビビの声が聞こえて俺は足を止めた。
声のする方に静かに歩いていくと、ビビと男が向かい合ってる所だった。

「もう大丈夫?
そんなに早くユバに戻ってしまうの?」
そう聞くビビに男は
「ああ。
一刻も早く復興させなければならないからな。
それよりビビ…色々と悪かったな。」
と言った。
その目を見て、俺はこの男もビビを想っているのだと分かった。
ビビは男に向かって笑いかける。

「悪いのはクロコダイルよ。
リーダーはただアラバスタを守ろうとしただけじゃない。」
ビビの笑顔を男はまぶしそうに目を細めて見ていた。

その時、俺はビビはいずれこの男と結婚すんじゃねえかと思った。
王の一人娘のビビが王家を継ぐためには結婚しないわけにいかない。
俺のいなくなったアラバスタでビビはこの男と結婚してしまうんじゃないか、俺は何でかは分からないがそう思ったんだ。
これ以上、ビビと男を見ていたくなくて俺はその場を後にした。

アラバスタ王家の血が存続していくためには、ビビは結婚して子供を産む必要がある。
…俺じゃない、別の男の子供を。

そう思ったら、手が震えた。
怒りなのか、悲しみなのか、ビビが俺以外の男を愛することに恐怖してるのか、自分でも分からない。
ただ、手が震えた。
どうしていいか、分からなかった。
分からないのに、別れの時間はあっさりとやってきた。


目の前で微笑むビビに俺は何も言えなかった。
何も言えない俺にビビは笑顔のままで言う。

「絶対になってね、世界一の剣豪。
そしてきっと、またここに来てね。
待ってるから。
ずっと、待ってるわブシドー。」

「……ずっとっていつまでだ?」

やっと出た声は掠れていた。
ずっと待ってるって言ったって、いずれお前は王家を継がなきゃならないんだろ?
そして結婚しなきゃならないんだろ?
答えを聞くのは怖くて言えなかったけど、心の中でそう思った。

「ずっとはずっとよ。
あなたが世界一の剣豪になるまで、待ってるわ。
おばあちゃんになっちゃっても、あなたを待ってる。
あなたは私の初恋よ。
そして、最後の恋の相手よ。」

ビビは笑った。
それはとても綺麗な笑みだった。
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