銀魂

□君がため
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「綺麗…。」
万斉はベッドに座って、その足の間に九兵衛は座っている。
後ろから九兵衛を抱きしめながら、万斉は取り寄せておいた和菓子を九兵衛に見せていた。
「これ、何で出来てるんだろう?」
九兵衛の菓子を見る目は輝いている。
「寒天とこし餡と求肥とかでござろう。」
「それでこんな綺麗なものが作れるなんて、職人はすごいな。
食べるのがもったいないみたいだ。」
九兵衛の言葉に万斉は思わず笑ってしまう。
食べるのがもったいないなんて、セレブのはずなのに可愛いことをいうと思ったのだ。
「そうは言ってもせっかく取り寄せたんだから食べてみるでござるよ。」
万斉が九兵衛を抱きしめる腕に力を込めると、九兵衛はそっと万斉の腕に触れた後、
「もったいないけど、食べてみる。
頂きます。」
そう言って和菓子を口にした。

万斉は後ろからその様子を見ていた。
本人は気が付いていないのかも知れないが万斉からみえる九兵衛の白い首の後ろにはキスマークがいくつもある。
長襦袢と羽織に隠れている九兵衛の体にも、きっと、たくさんの高杉がつけたキスマークがあるんだろうと思う。

もう高杉が九兵衛をここに連れてきて二ヶ月になる。
柳生家次期当主・柳生家始まって以来の天才で神速の使い手である柳生九兵衛が行方不明になって二ヶ月、攘夷浪士がこの失踪に絡んでる可能性もあるとして、真選組や見廻組まで動員されて行方を捜していると今朝の新聞に書いてあった。
まさか、その九兵衛がこんなところでこんな目にあってるとは誰も思っていないだろう。
九兵衛に関するニュースを見るたび、そしてこうして九兵衛と二人きりで会うたび、万斉は助けてやりたい、逃がしてやりたい、一緒に逃げたい、そう思う。
二人きりで会えば会うほど、九兵衛を愛しいとか愛してるとか、そういう気持ちが大きくなってくる。
それはきっと九兵衛も同じだと思う。
九兵衛が自分を愛してくれてると一緒にいて感じている。
だけどその九兵衛が高杉に抱かれているのを分かっていても万斉は何もできない。
それがもどかしくて情けない。
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